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新たな課題が生じ、それを解決できる高度なスキルへの需要が増す中、企業は自社の人材を育成するのではなく、他社の人材を買ったり奪ったりすることで対処してきた。しかし、これは持続可能なモデルとはいえず、企業は人材獲得競争ではなく従業員教育に投資すべきだと筆者は主張する。


 ユーザーエクスペリエンス(UX)のデザイン、サイバーセキュリティやデータサイエンスといった新たなスキルに対する需要が増すにつれ、世界中の人々が、そして労働市場が後れを取るまいと奮闘している。世界経済フォーラムが最近行った調査によれば、グローバル企業のCEOの8割近くが、適切なスキルを持つ人材の不足や欠如に関して懸念があると述べている。

 組織はこれまで、人材獲得をめぐる競争によって対処してきた。つまり、組織の中で人材を育成するのではなく、他の組織の人材を買ったり奪ったりしてきたのである。

 多くの組織が空いたポジションを埋めるべく競争を繰り広げ、採用(あるいは横取り)のために躊躇なく大金を注ぎ込む一方、社内にいるスキル不足の従業員に対するトレーニングには投資したがらない。おそらく、トレーニングによってスキルを高めた魅力的な人材を競争相手に奪われることを、危惧しているのだろう。

 従業員一人当たりの研修費用(年間平均1000ドル程度)は、採用コスト(ほとんどの調査で4000ドル程度と見積られている)に比べてはるかに少ない。過去5年間で従業員のトレーニングに使われる費用は全体的には増加したものの、2018年に大企業が投じた一人当たりの費用は前年よりも減っている

 さらに、我々の最近の調査によると、雇用者の70%が新しいテクノロジーの導入、あるいはその予定であることを理由に従業員を解雇している。その一方で、ネットフリックスのような企業は、他の企業から人材を獲得するために、これまでの2倍の報酬をはずむという提示までしている。