4つのエクスペリエンスを1つのプラットフォームで統合的に管理できることにも大きな意味があると、熊代氏は続ける。
「近年は、『EXがCXの向上を左右する』という考えが、欧米企業に浸透し始めています。企業でCXを提供するのは、顧客と日々接している営業部門や店舗、コールセンターなどの従業員です。彼らが仕事に満足していなければ、顧客も満足させられないということです」
同様に、CXは商品・サービスやブランドのエクスペリエンス向上にも影響を及ぼす。クアルトリクスのXMプラットフォームの活用を進めるクラウド名刺管理サービスのSanSanでは、プロダクト部門がサービスの新機能を検討する際、CXアンケートの結果を参考にしているという。このように、相関する4つのエクスペリエンスを1つのプラットフォームで管理することにより、相乗効果を高めるわけである。
パネルとテンプレートで
効率的な調査を支援
XMで最初に行うのは、アンケートやサーベイによるエクスペリエンスギャップの可視化だ。これらによって顧客や従業員が現在のエクスペリエンスをどう受け止めているかを把握・分析した後、それを改善するためのアクションを実行する。
「満足度調査などのアンケートを支援するサービスは多くありますが、回答を分析して終わりというものが大半であり、ギャップを解消するためのアクションまでサポートしているものはありません」(熊代氏)

カントリーマネージャー
熊代悟氏
クアルトリクスのXMプラットフォームでは、日本を含め世界中の調査会社と提携して市場調査用のさまざまなパネルを用意しており、用途に最適なパネルを購入して調査を実施できる。
また、プラットフォーム上のマーケットプレースでは、主要なコンサルティング会社が自社の調査手法に基づく設問と結果分析用シートなどをセットにしたテンプレートを提供している。これを使えば、アンケートの実施からレポーティングまでを自社で行うことも可能だ。
さらに、XMでは「オペレーショナルデータ」(Oデータ)と「エクスペリエンスデータ」(Xデータ)という2種類のデータを使う。Oデータは売り上げや受発注に関わるデータなど、どの企業でもすでに保有しているデータであり、これが“過去”のことを教えてくれる。一方、Xデータはなぜ売り上げが向上したのか、なぜ顧客はサービスの利用を停止したのかなど、エクスペリエンスに関することを教えてくれるデータだ。
XMでは主にXデータを扱うが、Oデータに関してはCRM(顧客関係管理)や人事システム、ERP(統合基幹業務システム)など、主要な製品との連携に対応している。
XMは今日、世界中のさまざまな業界で活用されている。例えば、スマートフォンを活用した新たなエクスペリエンスで、「ライドシェア」という新市場を切り開いた米ウーバー・テクノロジーズだ。
同社はXMプラットフォームを使って多様化が進む消費者の嗜好に最適なエクスペリエンスを探り続けており、そうした取り組みの中から「食べたい物を、食べたい場所に届ける」というエクスペリエンスにフォーカスした宅配サービス「ウーバーイーツ」を生み出した。