中国人学生が就職したい日本企業はソニーと松下だけ?

 故松下幸之助が初めて中国を訪れた後、すぐさま対中投資を決断して以来、中国で事業を展開する外国勢の一角を日本企業が占めるようになった。現時点における対中投資の累積額を見ると、日本は3番手で、アメリカ企業にはわずかに及ばないが、ヨーロッパ企業よりはかなり多い(図1「各国の対中投資」を参照)。

 しかし、中国における日本企業の影響力となると、投下資本に見合ったものとはとうていいえない。2004年3月、中国発展研究基金会(CDRF)と在中世論調査会社の零点調査集団(ホライズン・グループ)が共同で、『中国人の目から見た外国資本:外資の中国社会への浸透度に関する調査リポート[注]』と題する文書を発表した。

 この調査リポートは、2部構成になっている。前半は外国企業に関する総合的な分析、たとえば企業への評価、社会的イメージ、就職先としての評価、商品やサービスの評価などであり、後半は外国企業の経営・業務(企業文化や労働環境など)に関するアンケート調査である。

 このリポートによると、日本企業が他の外国企業よりも優れているのは「商品やサービス」だけだった。つまり、日本製品は中国社会に広く認知されているが、とりわけ就職先としての評価など、他の面では欧米企業に大きく後れを取っている。

 中国の代表的な人事サイト、中華英才網(チャイナHRドットコム)では、毎年「中国で人気の高い雇用主:中国の大学生が働きたいと思う会社」というアンケート調査を実施している。2004年のアンケート結果では、上位50位までに入った日本企業はソニーと松下電器産業だけで、その他は軒並み低評価であった。

 中国における日本企業の未来を慮るに、これは大いに問題である。『三国志』には、ある不変の原則が繰り返し語られている。すなわち「得民心、才能得国、失掉民心、就会失国」(民心を得れば国を得る、民心を失えば国も失う)である。

 では、日本企業が中国市場での競争に勝利するために、かの地の優れた人材を獲得し、その能力を引き出すにはどうすればよいのだろう。

中国人社員の二面性と本質

「中国人社員の文化的特性のなかで、いちばん目立つのは多様性と二面性です」と周小華は(ジョウ・シャオホア)言う。彼女は、北朝鮮、日本、モンゴル、中国、韓国を担当するユネスコ地域事務所で、教育担当官代理兼国際コンサルタントを務めた経験の持ち主である。そして現在、多文化に関する調査と多様性(ダイバーシティ)研修を提供する中西慧通(ウェイストーン)のオーナーである。