コンクリートの大箱志向は
自然を破壊し、人間を不幸にする

編集部(以下色文字):隈さんは「コンクリートから木へ」を生涯のテーマとして掲げられ、コンクリート建築が地球環境や人の暮らしに及ぼす負の影響を指摘され続けてきました。その問題点を教えてください。

(以下略):コンクリートの建築が象徴するのは、建物の大きさに価値を見出す「大箱志向」とも呼ぶべき思想です。これは僕たちが暮らす社会に、さまざまな負荷を与える要因となっています。

 大箱志向の歴史を遡ると、14世紀に始まったルネサンスが原点です。欧州で大流行したペストをきっかけに、衛生環境が未整備の村落や街路で生活していた人たちが、整然とする数学的なものに支配された都市に移行したといわれています。当時の建築は人間が都市に住むために存在し、都市とは大箱の集合体であるという認識が生まれました。