地域の違いを理解することが
グローバル競争の条件

 あなたの会社は広く国際化しているとしよう。その場合、何がしかのグローバル戦略が立案され、そこではまず間違いなく、莫大な時間、資金、エネルギーが費やされていることだろう。その戦略は鳴り物入りで導入されたものかもしれない。しかしながら、グローバル戦略がボーダーレス競争のロードマップたりえないことは多い。

 国際事業で好業績を上げている企業は、グローバル戦略に加えて、またはその代替として地域(リージョナル)戦略を採用している。それは、グローバル戦略への失望から来る場合もある。言い換えれば、グローバル企業にも、地場企業と同じ目線で地域戦略を考える必要があるといえる。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEO、ジェフリー・イメルトは、地域チームがGEのグローバル活動のカギを握っていると主張しており、事実、製品部門ごとに構築されたリーン生産体制を、各地域統括本社を結んだネットワークで補強している。

 また、ウォルマート・インターナショナル社長兼CEOのジョン・メンツァーは従業員に向けて、グローバル・レバレッジとは「グローバル」「リージョン」「ローカル」の3つのレベルからなる三次元のチェスをプレーするようなものだと、ことあるごとに言って聞かせる。

 トヨタ自動車は、地域志向型アプローチの威力を最大限に発揮している最右翼といえるかもしれない。たとえば、副会長の張富士夫は次のように述べている。「当社は、各地域における事業の現地化をさらに推進し、独立性を強化することによって、今後もグローバル化を進めていく方針です」

 これら成功企業のリーダーたちは、グローバル経済に関する2つの重要な事実を理解している。第1は、グローバル化の勢いがますます高まっているとはいえ、地理的な違いやその他の差異が消滅したわけではないという点である。むしろ、このような差異こそ、これまで以上に重要になっている。

 第2に、地域戦略は、国単位のローカル戦略とグローバル戦略の単なる中間の存在ではなく、むしろ独立した戦略であるという点である。ローカル戦略やグローバル戦略と並行して展開されると、地域戦略は企業業績に大きく貢献しうる。

 本稿では、さまざまな成功企業の地域戦略について検討し、市場や事業の発展に応じて、これらの企業がどのように戦略を転換したり、組み合わせたりしているのかを紹介する。ただしその前に、まずボーダーレス戦略において地域が重要な地理的単位となる理由について、その経済的側面からもう少し詳しく検討しておこう。

 地域という市場に注意を払う必要性を説くうえで、よく引き合いに出されるのが「地域経済ブロックの出現がグローバル化の進展にブレーキをかける」というものだ。この見解の背後には、地域化がボーダーレスな経済統合に代替するという考え方が見られる。