サイロ化した組織に横串を通すために

 サプライチェーンを最適化するためには、営業や生産、購買、物流など多くの部門の連携が欠かせない。サプライチェーンの変革を進める上で、以前から指摘されてきた課題が日本企業のサイロ化した組織構造である。各部門が個別最適を追求すれば、全体の効率は低下せざるを得ない。場合によっては、顧客に迷惑を掛けることにもなりかねない。西岡氏もこの点を懸念しているという。

「20~30年ほど前には、ある種の異端児的な人がいて、縦割りの組織をつなぐ接着剤や潤滑剤のような役割を担っていました。経営者側からも一目置かれていて、多少のルール違反は覚悟で、組織間ではみ出た仕事もこなしていました。かつては多くのメーカーにそういう人材がいましたが、コンプライアンスの強化や組織の締め付けなどにより、いまではほとんど見かけなくなりました。本来、組織にはある種の“遊び”が必要です。いい意味でのルーズさを、どのように取り入れるか。日本の製造業には、もう一度考えてもらいたいと思っています」(西岡氏)

 クロスファンクショナルチームを設けて、組織に横串を通そうとしている企業もある。ただ、成功例は多いとはいえない。西岡氏は「組織設計や制度には限界があります。最終的には、人と人とのつながりの中で解決するしかない。私はそう思っています」と語る。

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図2 究極のサプライチェーンとは?

 最後に、日本の製造業に対するアドバイスを西岡氏に聞いた。

「新型コロナにより、日本の製造業は世界とのつながりを強く意識したと思います。そこにリスクを見いだしてグローバルサプライチェーンを再設計する企業もあるでしょう。その際には全体を俯瞰した上で、日本および海外拠点の位置付けを明確にする必要があります(図2)。『国内回帰ありき』ではなく、あくまでも最適化に向けたサプライチェーン変革を推進してもらいたいですね」(西岡氏)

 繰り返しになるが、環境変化によって最適な状態は常に変化する。将来にわたって、環境変化のスピードは加速し続けると考えるべきだろう。