●構造化されたセレンディピティ

 最後に、5つ目のデザインドライバーであるセレンディピティとは、別のことを探求している時に偶然、素晴らしい何かに遭遇することを意味する。

 きちんと設計されたイマーシブな体験は、それを構成するフォーマルな交流とインフォーマルな交流の絶妙なバランスによって、セレンディピティの瞬間をもたらす豊かな素地をつくる。

 こうした素地をつくるプロセスには、参加者の多様性や教育的プログラムの種類、さまざまな同僚とつながる機会、フォーマルとインフォーマルのつながりをつくりやすい場所、自省と共有をもたらす空間の確保が含まれる。

 企業買収のスピードアップを図りたい場合には、夕食会や散歩、レクリエーション活動など、構造化されない交流時間をつくるのがよい。そうすることでインフォーマルな交流が促され、個人的なつながりが深まると同時に、重要でクリエイティブなインサイトがもたらされたりすることも多い。

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 本稿で紹介したコンセプトは、あなたの組織がいつどのように対面交流を再開するか検討するにあたって、コラボレーション、イノベーション、文化変容、献身の4つのバランスが適切に取れているかを判断する助けになる。そのバランスが明確になれば、あなたのチームにとって最高の価値を生む対面交流の設計を始めることができるだろう。

 優れたバランスの経営開発は、ビジネスの短期的・長期的成功に欠かせない基礎となる。今後の課題は、集中的な対面の体験がもたらす永続的な価値を理解し、それを拡張・拡大するバーチャル交流を活用することだ。

 それらがブレンドされた未来の到来はまだ先になりそうだが、企業は対面交流がもたらす正当な価値を見極め、その貴重な機会を最大限に利用する方法を考え始める必要がある。


HBR.org原文:When Do We Really Need Face-to-Face Interactions? January 04, 2021.