●パーパスのある集中

 対面の体験は本質的に、集中力を生み出し、それを維持するポテンシャルがある。物理的に誰かと一緒にいる時には、ほかのことに気を取られる可能性が低い。グループダイナミクスによって、対面交流時の集中はさらに強化される。同僚とともにいることで、それぞれの意識がタスクに集中しやすくなるのだ。

 あなたの組織が、企業買収による経営統合を加速するプログラムを開発しているとしよう。パーパスのある集中を実現するためには、買収する側と買収された側の両方からキープレーヤーをオフサイト、特に本社とは離れた場所に招き、気が散ったり「他人の芝生」にいるという感覚に陥ったりすることなく、集中できる環境をつくるのがよい。

 ●個人的な絆づくり

 これはコラボレーションとイノベーションをもたらす安全な環境をつくるうえで、特に重要になる。絆づくりとは、参加者の間に情緒的つながりを生み出し、信頼やサポート、開放性(オープンネス)をもたらすことをいう。

 企業買収の例であれば、キープレーヤーが小さなグループに分かれて、自分の仕事や人生経験について語り合ったり(これにはコーチがついてもいいだろう)、互いをもっとよく知るためにインフォーマルな交流の機会を持ったりすることを促すことができる。

 ●ディープラーニング

 コンセプチュアルラーニング(概念学習)とは、エンパワーメントや自己資本利益率(ROE)といったコンセプトを理解することだ。これに対してディープラーニング(深層学習)は、こうしたコンセプトに取り組み、それらがいつどのような時に有用になるか議論したり、わずかなコンテクストの違いがその応用方法にどのように影響を与えるか理解したりすることを意味する。

 ディープラーニングは、こうしたコンセプトが自分たちの置かれた特定の状況や課題にとって意味することを探索する時間、場所、サポートがある時に起きる。ここで「探索する」とは、自分たちの現在地を正直に語る機会と、それについて同僚からフィードバックを得て、疑問符を投げかけられる機会を意味する。こうしたディープラーニングによって、コンセプトが特定の状況で生きいきとした意味を持つようになる。

 企業買収の例では、会社が統合するというコンテクストにおいて、買収はどのような恩恵をもたらすのか探索することで、より深い理解を得られるようになる。

 ●妨げのない実験

 企業における実験は、縄張りやリソース、昇進、手柄などをめぐる懸念によって妨げられることが多い。こうした懸念にじゃまされることなく実験できるようにするには、イマーシブな対面交流を通じて、個人的な信頼関係や絆を構築する必要がある。

 実験は、厳しい時間的制約がある中で、迅速なフィードバックを繰り返しながら、デザイン思考と実用最小限のプロダクト(MVP)のプロトタイピングを駆使して行われる。

 企業買収の例に戻れば、参加者の間に共通理解を構築できたら、経営統合のシナリオや統合計画のプロトタイプを作成することができる。