年々高まるビジネススクール批判

 ビジネススクールは歩むべき道を見失っている。MBAプログラムは、長年にわたってアカデミズムにおける地位を向上させる一方、実業界においてもその評判を高めてきた。その入学試験もかつてなく厳しくなり、そのおかげもあって卒業生たちが手にする報酬は急騰の一途をたどってきた。

 しかし、そのMBAプログラムがいま強烈な批判を浴びている。たとえば、現実のビジネスで使えるスキルを教えていない、ビジネス・リーダーへの準備とはほど遠い、倫理的な行動規範を徹底できていない、挙げ句の果てには、卒業してもよい仕事に恵まれないといった声さえ聞こえてくる。

 このような批判は、学生たちや企業、マスコミからだけではない。ノースウエスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント学長のディパーク・ジェーンをはじめ、アメリカで最も名立たるビジネススクールの学長たちからも、同様の声が上がっている。

 かねてから声高に批判している一人、カナダ・モントリオールにあるマギル大学のヘンリー・ミンツバーグは、そもそもの原因は、授業の内容が現実のビジネスとかけ離れてきたことにあると指摘する。カリキュラムの改革に着手している大学の数がその真偽を測る目安になるというならば、ミンツバーグの主張にうなずく学長は少なくないだろう。

 もっとも、MBAのカリキュラムを改革するといっても、はっきりした答えなど、あってないようなものである。なぜなら、カリキュラム自体はあくまでも現代のビジネススクールが病んでいることを示す症状の一つにすぎず、それが病巣ではないと我々は考えているからだ。

 今日のマネジメント教育の危機は、カリキュラムうんぬんよりも、さらに根深いところにその原因は潜んでおり、その発端はビジネススクールの著しい変容にある。ここ20~30年の間、多くの主要ビジネススクールは、地味ながら「学術的な卓越性」という、ビジネススクールに不相応な、そして結果的に自滅を招くような目標を掲げてきた。

 ビジネススクールは、卒業生の習熟度をはじめ、教授陣の理解度、たとえば企業業績を向上させる重要要因とは何かといったことではなく、研究の厳密な科学性を評価尺度に採用し、抽象的な財務分析や経済分析、統計的な重回帰分析、心理学を利用した科学モデルなど、研究室内の活動へと傾斜していった。

 一部の研究成果には優れたものもあったが、実学に根差した内容はほとんどなく、マネジメント教育における焦点は狭まる一方で、現場のマネジャーたちから見れば、実務との関連性は乏しいといわざるをえなくなった。