インターネットの普及による顧客と企業との関係性の変化は、ビジネスの在り方までも大きく変えている。これまでのような顧客満足度の向上だけでなく、顧客の課題解決を目標とする“カスタマーサクセス”によって顧客価値を最大化することが、継続的な成長につながる。しかし、実現のためのハードルは高い。どこからアプローチすればよいのだろうか。

既存顧客との関係構築が企業収益を向上させる

 人口が減少し続ける日本市場において業績を上げ続けるポイントは、既存顧客からリピートを獲得し、取り引きを拡大していくことだ。新規顧客の獲得に比べてコストもかからないことが多く、収益性向上にもつながる。その根底にあるのが、顧客との継続的な関係性を維持していく「ライフタイム・バリュー(Life Time Value:LTV)」という考え方だ。

 このLTVをどうしたら最大化できるのか。そのカギとなるのが、カスタマーサクセスである。カスタマーサクセスへの取り組みを支援するコミューンの代表取締役CEOの高田優哉氏は「カスタマーサクセスとは、自社の製品やサービスを通じて、顧客の課題解決を後押しすることです」と語る。

コミューン 高田優哉
代表取締役CEO

 カスタマーサクセスは、既存顧客を維持して離脱を防ぐ必要があるリテンション型のビジネスから広がりだした。インターネットを使ってサービスを提供し、利用料金を収入源とするクラウドサービスがその代表例だ。継続的に利用してもらうこと、つまりLTVを高めることが業績に直結する。だからこそカスタマーサクセスが追求された。

 じつは、その対象はインターネットの世界に限らない。LTVの考え方はどの業種業態でも当てはまる。「ただし、その関連性が見えやすい業種と見えづらい業種があるのは確かです」と高田氏。たとえば、住宅関連ビジネスの場合、住宅を購入した顧客が次に住宅を購入するのは、通常は数十年後になる。購入する際に手厚く顧客を支援しても、その効果が見えにくい。

 しかし、インターネットの普及で状況は大きく変わった。高田氏は「顧客のメディアパワーが高まったことで、カスタマーサクセスはますます重要になっています」と話す。製品やサービスに満足しなければ、その不満は瞬時にSNSや口コミサイトで拡散される。失注に結びつくこともあるほど、経営的なインパクトは大きい。もちろんその逆もある。だからこそカスタマーサクセスが重要になる。