ほとんどの企業が
アウトソーシングを活用できていない

「ソーシング」という言葉は長年、資源調達──財務上重要だが、経営戦略上はあまり価値のない機能──の同義語として使われてきた。しかし今日、急速なイノベーションを背景に拡大するグローバリゼーションが、競争の前提そのものを変えつつある。

 いまや、ケイパビリティを社内に抱えているかどうかではなく、それを管理したり育成したりする能力が重要視されている。それらがオン・バランスか、オフ・バランスかは関係ない。

 アウトソーシングはますます進化し、エンジニアリングやR&D、製造、マーケティングといったコア機能さえも社外の専門事業者に委託できる時代になった。実のところ、アウトソーシングのほうが望ましい場合が少なくない。その結果、組織構造、バリューチェーン、競争上のポジショニングに変化が生じる。

 先進的な企業は、組織とバリューチェーンの柔軟化に努めている。垂直統合型のビジネスモデルが衰退し始め、アウトソーシングは、バリューチェーンを形成・調整する戦略的なプロセスへと進化しつつある。

 そして現在、特定のケイパビリティや活動をアウトソーシングすべきかどうかではなく、バリューチェーンを構成する全活動をどのように調達すべきかが問われている。「ケイパビリティ・ソーシング」こそ、新しい戦略課題なのだ。

 ソーシングの新世界を見渡すには、先進的な企業が、これまで自前で抱えるのが当たり前と考えられてきた機能を、まったく新しいアウトソーシング産業に転換させている例に触れてみるのが最適だろう。

 物流管理のユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、EMS(電子機器製造サービス)のソレクトロン、人事コンサルティングのヒューイット・アソシエーツなどは、特定の機能において一定規模を確保し、そのためのスキルを集中させて、新しいビジネスモデルを構築している。このように特定機能に特化した企業の成長に伴い、あらゆる企業においてアウトソーシングの潜在価値が高まっている。

 どの機能について、規模の拡大とスキルの集中を追求すべきかは、状況によって異なる。たとえば、ヴァージン・グループはブランド・マネジメントというケイパビリティを、航空機や鉄道、音楽、携帯電話、個人金融サービス、そしてブライダル・ウエアへと展開している。