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史上最強のチェス・プレーヤー、競争を語る
競争について語る時、チェスほど適切な例えはないだろう。法廷の弁護士も、戦場の将軍も、遊説中の政治家もみな、己の戦いを64個の黒と白の升目、32個の駒になぞらえてきた。
ビジネスの世界でも、チェス用語は一般化している。経営幹部たちは「これでチェックメイト(詰み)だ」とか、「我々はポーン(将棋の歩に当たる駒)にすぎない」とか、「3手先を読む」といった表現をよく使う。
もちろん、チェス用語ばかりが引用されるわけではない。多くのビジネスマンは、ポーカー、野球やアメリカン・フットボールといったチーム・スポーツからも、インスピレーションを得ている。
とはいえ、チェスはやはり別格である。天才と天才が、技術と精神力の限りを尽くして戦う姿は何より圧巻である。そこに運が介在する余地など、まったくないと言ってよいだろう。いかに門外漢でも、チェスが複雑な思考と巧みな戦略を要求される競技であることはおわかりだろう。チェスはそれほど素晴らしい競技なのだ。
すると、そこにはビジネスに役立つ教訓があるかもしれない。そこでHBRのシニア・エディター、ダイアン L. クーツは、マンハッタンのロンバルディ・ホテルで、ガルリ・カスパロフにインタビューした。
カスパロフは、22歳という史上最年少で世界選手権を制覇し、1984年からチェス世界ランキング1位に君臨し続け、いまなお史上最強と評されるチェス・プレーヤーだ(ただし、2005年、「チェスの世界で現実的な目標が見えなくなった」として引退。今後は公式試合には出場せず、非公式な対局や執筆活動に専念する)。
第2次世界大戦以降、旧ソ連はチェスの世界チャンピオンを数多く輩出してきたが、彼も旧ソ連の出身であり、そこで手ほどきを受けた。しかし、他の旧ソ連の有名人とはまったく違う。
というのも、他の有名人たちは決められた活動にだけ従事し、できるだけ控えめにしているのに、カスパロフといえば、政治活動に傾倒し、いまも野党支援を続けているからである。実際、2008年の大統領選をにらみ、年内の新党結成へ準備を進めている。