企業はデカップリングを望んでいない
米国の政治家と一般市民は、新型コロナウイルス危機の初期に起きたN95マスクや重要な医療機器の不足を機に、自国が中国での生産にいかに大きく依存するようになっていたかを、まざまざと思い知らされた。そんな中、トランプ政権の対中強硬政策はマイナスの副作用が生じうるにもかかわらず、広く支持されていた。2020年の最初の10カ月間に、「中国離れ」「中国とのデカップリング」という表現を用いた記事は、それ以前の3年間の3倍にも達した。
ところが企業エグゼクティブの大半はデカップリングを望んでおらず、その理由は容易に理解できる。ある企業幹部は「中国への進出を果たすのに13年を費やしたのです。撤退などできるはずがありません」と語った。これは一般的な見方である。筆者らが知る限り、企業幹部は誰一人として、中国でのプレゼンスを築くために費やした時間、努力、資金が無駄になるのを見過ごしたくはないのだ。
バイデン政権下ではトランプ時代と比べていくぶん対立姿勢が和らぐ可能性があり、CEOたちはこの問題がうまく収まることを期待しているかもしれない。仮にデカップリングが米国政治にとって異例なものであれば、その見通しは正しいかもしれない。しかし、ジョージ W. ブッシュ、オバマ、トランプ政権の計15年以上にわたり、中国は他国の技術やケイパビリティへの依存度を低下させる戦略を取ってきた。しかも、この戦略をさらに15年間続ける計画である。デカップリングは今後ますます重要な意味を持ち、以下で述べるように、グローバル企業の戦略に大きな影響を及ぼすと考えられる。