グローバリゼーションのなかでインド経済の発展を読み解くためには、過去十数年の経済成長の成果だけに目をとらわれていてはいけない。たしかにITや金融環境の変化がもたらす現代のグローバリゼーションは冷戦終結以前の世界とは相当異なるかもしれない。しかし、古代以来18世紀末までの世界において、インドは世界的な交易の中心を担う経済大国であり続けた。東の中国を中心とする大中華圏と、西のイスラム社会さらに近世以降は西欧社会と、異なる文化が交流する接点として繁栄を謳歌していたのだ。木綿をめぐるイギリスとの貿易摩擦を遠因とする産業革命によって、世界経済の前線から外れたが、それ以来の、たかだか200年の眠りから醒めたにすぎないのだ。