●クリーンなバージョンを共有する
数え切れないほど編集が書き込まれたままの状態ではないほうが、文書を読んで確認しやすい。できるだけ頻繁に、クリーンな最新バージョンを作成して、編集プロセスを適切な方向に進める。
常に「変更履歴」を使って編集箇所を表示する代わりに、変更箇所を黄色いハイライトで強調したり、コメント欄に記入したりすれば、テキストは比較的きれいで読みやすくなる。レビュアーが過去の編集内容を確認したい時は、前のバージョンを簡単に参照できる。
次のレビュアーや承認者の参考になりそうだが、懸念事項には対処したことを示したい時は、コメントを「解決済み」することもできる(グレーで薄めに表示される)。
クリーンな文書は前に進み、赤線の入った文書は足踏みをすることを覚えておこう。
最終承認者が誰であれ(基本的にバイラインの名前の人)、レビューのために「汚れていない」バージョンを読む権利がある。最終承認者に提出する文書は、きれいな状態にするまでの戦いや妥協の痕跡を表示せずに読めるようにする。
●バージョン管理の徹底
可能なら、アップルのiCloud、グーグル・ドライブ、マイクロソフト・ワンドライブ、ドロップボックス、ボックスなど、クラウドベースのファイル管理システムを使って文書を共有する。クラウド上のファイルのリンク先を送信することで、バージョン管理を徹底し、前のバージョンにも簡単にアクセスできる。最新のドラフトそのものを毎回、送信しなくても、必要に応じてその都度、変更や修正を行うこともできる。
クラウドベースのファイル共有システムを導入していない場合は、あるいは導入していても、重要な情報、特に日付を示すような文書名をつくり、簡単に更新できるようにする(例:HRpolicy_JSedit_7_4_21_3pm)。
●生産的に話を聞く
編集の際は、コミュニケーションに齟齬が生じないように、アクティブリスニングを心がける。具体的には、話を聞きながら詳細なメモを取る、レビュアーの提案を繰り返す(「あなたのコメントによれば、Xの例をもっと見たいということですね」)、反応する(「うまくいくはずがありません」)より応答する(「私にできるのはこれです」)など、より積極的に耳を傾ける。
全員の貢献に対して頻繁に感謝を示すことも、相互の尊重、協力、目標の共有といったポジティブな人間関係が強化されて、妥協と前進の両方の歯車を動かすことができる。
●理由を説明する
プロジェクトマネジャーとしての仕事は、指示を伝えることではなく、合意を形成することだ。ただし、他の参加者があなたの視点を理解していなければ、うまく合意を形成することはできない。あなただけでなく他のメンバーも、メールや変更履歴の「コメント」を使って、変更や歩み寄りの理由を説明しよう。
ある解決策を提案する理由を相手が理解すれば、受け入れてもらえるかもしれないし、他の方法を引き出せるかもしれない。
●それぞれのバージョンの意図を伝える
レビューチームとのコミュニケーションにおいて、特にプロジェクトの後半では、必ずあなたの意図を伝える。そうすれば混乱や無駄な作業が減るだろう。
筆者はメールの件名に、たとえば「レビューについて」と記し、レビューの依頼であることを明確にする。ただし、礼儀として文書を見せるだけの場合は、件名に「FYI(参考までに)」と書いたり、メール本文に「あなた用のファイルです」と書いたりする。
コミュニケーションの透明性は、プロセスの効率を向上させる。「レビューは数回行っているので、緊急性の高い問題点だけを指摘してください」「締切りは木曜日です。本日中に最終レビューをお願いします」と明確に伝えることは、プロジェクトマネジャーの役割だ。あるいは「これらは私からの提案ですが、受け入れるかどうかについてはお任せします」と書き添えて、緊急の修正ではなく個人的な提案であることをわかりやすく示すレビュアーもいる。
このように透明性を確保すれば、あら探しに躍起になる人がいなくなるだろうか。そうはいかないだろ。それでもほとんどの参加者は、緊急性の高い問題が生じた場合を除いて、これが編集の「最終案内」だと納得するだろう。
複雑なプロセスを簡潔にすると、仕事の質だけでなく、チームの士気や熱意も高まる。逆に言えば、赤字が増えるほど不安も募る。レビュープロセスをより効率的で生産性の高いものにする方法を、同僚や上司と常に話し合おう。
よりよい編集プロセスを構築することができたら、きっとほかの人たちも知りたいはずだ。ぜひ、変更履歴を残してほしい。
"A Better Approach to Group Editing," HBR.org, July 28, 2021.