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夢の組み合わせが「地獄の合併」に化ける
ほとんどのCEOは、好むと好まざるとにかかわらず、M&Aなくして成功はないと認識している。有機的な成長、すなわちM&Aに頼らずに、既存事業だけでグローバル企業へと成長することはいまや不可能といえる。
ほとんどの業界は比較的緩やかに発展していくものだが、投資家たちは個々の企業に急成長を期待する。一口にライバルから市場シェアを奪取するといっても、すべての企業にできるわけではない。成熟産業であれば、なおさら難しい。そうなると、遅かれ早かれ、このギャップを埋めるために、企業はM&Aに目を向けざるをえない。
しかし、M&Aはけっして堅実な手段とはいえない。多くの企業は新たな成長機会を求めるあまり、自社が属する業界内で利益を上げるための基本ルールを見失う。
そこで、アメリカの大手家庭用品メーカー、ニューウェル・マニュファクチャリング(現ニューウェル・ラバーメイド)の事例を紹介しよう。
1999年、ニューウェルの経営陣は合併の可能性を探ろうと、ラバーメイドの経営陣に接触した。その当時、この合併は夢の組み合わせだった。
ニューウェルには30年にわたって、インテリアやDIY商品メーカーのレボロー、アルマイト製やステンレス製の鍋で全米トップのシェアを誇るカルファロン、〈シャーピー・ペン〉で知られる筆記具メーカーのサンフォードなどの買収を成功させて、その株主価値を高めてきた。
一方ラバーメイドは、この合併の直前には『フォーチュン』誌による「アメリカで最も尊敬される企業」の第1位に選ばれており、正真正銘の優良企業であった。同社は長年培ったイノベーションの歴史に支えられ、収益性もきわめて高く、急成長を遂げていた。