ポイント②──目的が濁らないよう、「独立」を死守する

 既存組織から独立させた新組織を「改革」という目的に向かって真っすぐ進ませるためには「独立」を守ることが重要だ。既存組織の論理に取り込まれてしまえば、小さな新組織の存在感などすぐになくなってしまうからだ。

栗原正憲氏(NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部長)

「既存組織の目的がビジネスの効率化なら、新規組織の目的は価値創造です。そのための開発手法も、前者はプロセスを順に積み上げていくウォーターフォール型、後者は小さいサイクルを素早く回すアジャイル型と真逆です。まったく違うものを交ぜると目的が濁ってしまいます。それぞれの価値を最大化するために『あえて交ぜない』ことを徹底しています」と栗原氏は語る。

 本事例においては、両組織のオフィスは物理的に遠く離し、メンバー同士の交流が起きないように、コミュニケーションツールも別にし、マネジメントラインを完全に分けているという。加えて、両組織の独立を完全に守り抜くためには、形式上の工夫だけではなく、リーダーの強い意志も必要だ。

「デジタルペイメント開発室にはとがったスキルを持つメンバーを集めたので、事業部全体を統括する立場としては、既存事業に彼らの能力を使いたくなる局面もありました。しかし、その誘惑に耐えて、業務は完全に切り離しています。既存事業がA面なら新規事業はB面で、将来的にはB面が表にひっくり返る可能性も十分にある。ビジネスのポートフォリオとして、どちらにも張っておく必要がありますし、タイミングよくひっくり返すためにも、役割を完全に分け、コンセプトを研ぎ澄ませることが重要と考えています」(栗原氏)