自分の第一印象は最初の150ミリ秒で決まる

 独創的なアイデアを考え出すのは簡単だが、これを初対面の人に売り込むのは難しい。起業家、営業担当役員、マーケティング・マネジャーが、新規事業計画や創造的なコンセプトの実用性、あるいは高い収益性を伝えようと苦心惨憺しているが、その真価を理解できたとは思えない意思決定者にはねつけられるケースが実に多い。なぜだろうか。

 問題は、アイデアそのものの質と同じくらい、「ピッチャー」(売り込む人)自身の特性にある。「キャッチャー」(売り込まれる人)は提案内容だけでなく、ピッチャーの独創性についても評価する場合が多い。

 実用的なアイデアを考え出す能力が高いのか低いのかという判断は、アイデアの価値そのものへの評価に即座に影響を及ぼす。そして、一度形成されてしまった見方はその後もずっと尾を引く。

 人はだれでも、自分自身の実力を慎重かつ客観的に評価してほしいと思う。しかし実際には、整然と区分けされたカテゴリーに勝手に分類されてしまう。そう、我々は他人を評価する時、何らかの型にはめるのである。

 したがって、初対面の人へのプレゼンテーションを準備する場合、聞き手はあなたを何らかのタイプに分類するだろうことを頭に入れておかなければならない。しかも、この分類作業は短時間のうちになされてしまう。

 ある研究によると、我々は人を150ミリ秒(1000分の150秒)以内に分類できるそうだ。であるならば、聞き手はあなたの性格について、30分以内に覆すことのできない判断を下しているかもしれない。

 このことは、私が500億ドルの市場規模を誇る、アメリカの映画・テレビ業界を長年調査してわかった事実である。本調査は、ハリウッドの業界幹部50人──シナリオ・ライターが持ち込むアイデアを評価する人たち──の協力を仰いで実施したものだ。

 調査は6年間にわたり、私はその期間中、シナリオ・ライターが初対面の意思決定者に向けた何十件ものプレゼンテーション(1回30分)に立ち会い、その後でピッチャーとキャッチャーの双方に話を聞いた。