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仕事でも私生活でも「これからどうすべきか」を問われる瞬間は頻繁にある。とりわけ、キャリアについては「いまの会社に留まるか、ベンチャーに移るか」「仕事を続けるか、専業主婦になるか」などの選択を迫られた時、身動きが取れず、自分が満足できる選択ができない状況に陥ることも少なくない。未知の領域に足を踏み入れようとする時、私たちは不安から衝動的な行動に走りがちだ。しかし、それでは満足できる結果は得られない。本稿では、衝動的な反応を抑え、創造的な解決策を実行するために踏むべきステップを紹介する。

 

 育児休暇から復帰して9カ月、シリコンバレーで管理職としてキャリアを築いてきたアンは、仕事を辞めるべきかどうか迷っていた。会社は子育て世代の従業員をサポートすると約束していたし、夫は積極的に子育てに関わってくれる。そのうえ、母親が子どもの世話を助けてくれた。それでも、ある領域で活躍すると別の領域が手薄になるという思いを抑えられなかった。

 「いったん辞めてしまうと、もう二度と仕事の世界には戻れなくなるのではないかと恐れていた。シリコンバレーという特殊な世界で孤立したり、孤独になったり、『ただの専業主婦』という汚名を着せられたりするかもしれないのに、自分は母親業に専念することを美化しているのではないかという不安もあった」

 アンにとって、会社に留まるか辞めるかは、選択肢としては明白なものだったが、どちらを選ぶか決めるのは不可能だった。

 世界的なデザイン会社のセールスマネジャーとして将来を期待されていたアシュリーは、アンとは別の選択肢の間で、同じようなジレンマに直面していた。大好きな仕事に留まるか、それともフルタイムでベンチャー事業に専念するか、だ。

「母と妹とビジネスを始めた」と、アシュリーは振り返る。「副業として始めたのだが、もっと大きなものにしたかった」。アシュリーは悩んでいた。自分のキャリア、大きな可能性のある情熱を注ぐべきプロジェクト、そして多忙な家庭生活にコミットする中で、3領域で同時に最大限の力を発揮するのに苦労していたのだ。

 アンとアシュリーが直面した競合する優先順位の問題は、キャリアの変曲点をもたらした。つまり、単なる軌道修正でもなければ、決められた車線のいずれかを選択すれば済むものでもなく、それ以上のことが必要となる。2人は地図もコンパスもない、未知の領域の入り口に立っていたのだ。

 変曲点、つまり「これからどうすべきか」という瞬間は、仕事でもプライベートでも頻繁に訪れる。それは、予期せぬ失職や慢性疾患に対処せざるを得ない状況といった困難によって生じることもあれば、アンやアシュリーのように、新たな機会に恵まれた時に生じることもある。

 きっかけが何であれ、新たな領域に移行しようとする時は、怖く感じられる。自分自身のアイデンティティや自己主導性に疑問が投げかけられた時は、なおさらだ。

 研究によれば、行き詰まったり、これからどう物事を進めればよいかわからなくなったりして、自分が引き裂かれたかのように感じた時、私たちが示す典型的な反応はさまざまだ。問題から手を引いたり先送りしたりして問題自体を回避することから、急な方向転換をしたり、手っ取り早い解決策を求めたりすることまである。

 人生を大きく動かすような変化に対して、自分がまずどのような反応を示すかを検証することで、当初の衝動を超えた場所に存在する可能性を探ることができる。そのためには、どれだけ訓練を重ねた優秀な人であっても、未知の領域では自信がなく、不安から衝動的に反応してしまうことを認める謙虚さが必要だ。

 実際の行動を起こす前に少し立ち止まって、調整を行い、リソースを確保して、新たな方向を定める習慣を身につけると、たとえ次に何が起きるかわからなくても、衝動的な反応を抑え、「これからどうすべきか」という状況でも好奇心を持って、クリエイティブに対応することができる。