-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
記録を打ち破り続ける調教師
5月といえば、アメリカの競馬ファンが考えることはただ一つ、三冠レースのことである。まず5月1日に「ケンタッキー・ダービー」、続いて15日に「プリークネス・ステークス」、そして6月5日に「ベルモント・ステークス」が開催される。競走馬の調教師として名を馳せるD. ウェイン・ルーカスと「マネジメントとは何か」について論議するのに、これほど最適な時期はないではないか。
ルーカスは数々の三冠レースの優勝馬を生み出し続けてきた。その記録を超える者はいまだいない。2000年のベルモント・ステークスでの優勝は実に13回目であり、この記録は伝説の調教師、サニー・ジム・フィッツシモンズの記録に並ぶものだ。
ただしこれも、彼が勝ち得てきた栄誉のほんの一部でしかない。由緒ある歴史を有する「ブリーダーズ・カップ」に17回も優勝し、これは同レース史上の最高記録である。アメリカ国内では、調教師の獲得賞金額では14回トップに輝いている。これまでに得た収入に至ってはおよそ2億5000万ドルに達している。
彼の素晴らしい業績は疑いないとはいえ、その流儀は業界内でたえず批判を浴びてきた。当初、ルーカスは長い歴史を持つ業界の伝統に抵抗し、ほかの調教師とはまったく違うやり方を考え出した。勝てそうなレースだと思えば、国じゅうどこにでも競走馬を連れていった。実際、それはより多くの勝利につながり、馬主たちを喜ばせた。
その成功によって、彼のところには、より優秀な競走馬が集まるようになった。この好循環に勝るものはないと確信し、このやり方は仲間の調教師たちにも広まった。
さて、競走馬の調教師が企業の経営陣にいったい何を教授することができるのか。まず"manage"が「ウマ」にその語源があるという事実を示したい。"manage"はラテン語から来ているが、最も近い意味のイタリア語の単語で表すと"maneggiare"であり、この言葉には「ウマを手なずけ、調教する」という意味がある。
そしてルーカスは、才能のあるウマを早くに見極め、世界レベルの競走馬に育て上げるという難しい仕事を成し遂げてきた。たとえそのウマがまったく言うことを聞かなかったり、臆病だったり、ましてや怠けウマであったとしても──。