
順天堂大学は、ライフサイエンス分野における研究開発を促進し、開発シーズ(種)の社会実装に貢献することをミッションとしたオープンイノベーションプログラム「GAUDI」(Global Alliance Under the Dynamic Innovation)を運営している。いま見据えているのは、グローバルな研究開発プロジェクトの支援だ。
ライフサイエンス、ヘルスケア領域における日本のアセットを、グローバルな社会課題の解決、公衆衛生の向上にどう活かしていけばいいのか。GAUDIの事務局である革新的医療技術開発研究センターの飛田護邦氏と奈良環氏、モニター デロイトの波江野武氏と倉田舞氏の4人が語り合った。
GAUDIは社会課題解決に向けた共振、共鳴の場
倉田 まず、「GAUDI」の概要についてご紹介いただけますか。
飛田 大学病院を有する大学においては、従来から「教育」「研究」「臨床」という3本柱のミッションを求められてきました。時代の流れとともに、そこに「研究開発」という新たなミッションが加わりました。大学にも社会実装を目指した実用化研究が求められるようになり、国もアカデミア発のベンチャー企業創出に力を入れています。
順天堂大学においても、みずからの強みを活かした研究開発に力を入れています。順天堂の強みを一言で言えば、「臨床力」です。首都圏近郊に設置されている6つの附属病院の病床数は全体で3500床以上、年間の外来患者数は300万人以上、入院患者数は100万人を超えます。また、がんや希少疾患、難治性疾患をはじめさまざまな専門領域の医学・医療の専門家、すなわちKey Opinion Leadersが在籍しており、大学病院の臨床力としては国内トップクラスだと自負しています。
そういった強みを活かした研究開発を推進していくために、2019年7月にスタートさせたオープンイノベーションプログラムが、GAUDIです。GAUDIでは、開発シーズの社会実装を一気通貫で支援しています。

順天堂大学
先任准教授 歯科医師 医学博士
革新的医療技術開発研究センター
レギュラトリーサイエンス・研究倫理研究室 室長
GAUDI事務局長
医学部附属順天堂医院 臨床研究・治験センター 副センター長
1999年日本大学松戸歯学部卒業。海外自衛隊幹部候補生学校、自衛隊横須賀病院歯科診療部研修医などを経て、海上自衛隊横須賀衛生隊第2衛生科 歯科係長、自衛隊横須賀病院歯科診療部 第3歯科長。2012年順天堂大学医学部形成外科助教、2014年厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室 ヒト幹細胞臨床研究対策専門官、2017年順天堂大学准教授。
開発シーズを持つ企業や研究者は数多く存在していますが、「アカデミアの臨床医師の意見を聞きたい」「一緒に研究開発に取り組みたい」と思っても、どうコンタクトを取ればいいのかわからないという悩みを抱えているケースが少なくありません。
GAUDIではそうした悩みを持つ学外の研究者や企業と順天堂の研究者(医師・医療従事者)を結び付け、チームビルディングや資金調達の支援を行うなどして研究開発体制を整え、順天堂の臨床プラットフォームを活かした臨床試験や医療機器・ヘルスケア開発などの実証実験を実現させます。
この一連のプロセスを、順天堂大学の革新的医療技術開発研究センター(実用化研究・事業化を支援)、研究戦略推進センター(基礎・応用研究を支援)、臨床研究・治療センター(臨床試験を支援)という3つのARO(学術的研究支援機関)が連携し、One Teamの支援体制を構築しているだけでなく、外部パートナーであるシンクタンクや特許事務所、ベンチャーキャピタルなどさまざまなエキスパートと協力しながら支援するのが、GAUDIの特徴です。