リソースを集中して「一点突破」で解決していく

――プロジェクトの発展段階によって座組みのあり方も変わってくると思います。スモールスタートした段階、そしてスケールしていく段階で、どのようなフォーメーションを組むべきですか。

中村 一概にはいえませんが、まだ未成熟なテクノロジーを使ったビジネスを始める場合によくある座組みのケースとしては、先端技術を持つスタートアップへの少額出資です。実際にビジネスを進めながら協業を積み重ねていき、お互いがうまくいきそうだと判断できた段階で、より深い連携を目指して追加出資したり、ジョイントベンチャーを立ち上げたりするなど、時系列を通じたさまざまな座組みの進化の方向性が考えられますし、そういった事業ステージに応じた、フォーメーションの進化を考えていくことが不可欠です。

中村 司
Tsukasa Nakamura
モニター デロイト
シニアマネジャー

――地方創生に関しては、政府の「デジタル田園都市国家構想」が注目されています。

高柳 冒頭で述べた通り、人口動態は“半ば不可避な未来”と言え、人口密度が低下していく地方において、いままでのやり方では官民ともに住民サービスを維持していくことが難しくなっていくのは明らかです。

 そこでデジタルインフラを整備して、「全国どこでも誰もが快適に暮らせる社会」を目指す、デジタルの力を活用して地方の社会課題を解決するというデジタル田園都市国家構想の目指す方向性に賛同しています。

 地方の人たちが快適な生活を維持できるようにするためには、既存のサービスオペレーションをデジタルに置き換えて、持続可能なモデルをつくっていくことになります。ただ、地方においては解決すべき社会課題が山積していますので、優先順位を決めて、限られたリソースを特定課題に集中し、「一点突破」で解決していくべきだと思います。そこで得た成果やスキル、ノウハウを生かして次の課題を解決していくというアプローチが現実的なのではないでしょうか。

 それぞれの地域によって優先課題は異なりますし、独自の地域資源にも違いがあります。そうした違いや特徴を踏まえて、地域発のオペレーション変革モデルをつくることが現実的に有効な解だと思います。

中村 デジタル田園都市国家構想の内外においても、各地方自治体が主体的に、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やデジタルを活用した社会課題解決に取り組んでいます。その中では、地方自治体間が連携してデジタル化に取り組むという、自治体DX領域での「広域化・共通化」が起こりつつありますし、デロイト トーマツ グループとしても率先してこの領域に注力してご支援を進めております。

 各地方自治体のリソースは限られていますから、デジタル基盤やデジタル人材を共通のリソースとして活用していくのは、課題解決に向けた現実的なアプローチだと評価できます。

 協調可能な領域においては自治体同士が大胆な連携を組むフォーメーションについても、検討する余地が十分にあると思いますし、日本において、このような自治体間連携や官民連携による社会課題解決がより深化していけば、この分野において世界の先導役となることも可能だと考えます。

高柳 少子高齢化が顕著な日本は、社会課題先進国だといわれますが、特に地方部はその先頭を走っていると言えるでしょう。今後、世界各地で雁行的に生じる少子高齢化の波を鑑みるに、地域発の変革モデルの確立は、世界への解決モデルの提示や世界における事業展開に向けて、大きな意義を持つものになると考えています。