「AI×RPA」を部下として使い、新しいことにチャレンジする

 長谷川さんご自身は、今後どんなことにチャレンジしていきたいとお考えですか。

長谷川 私がやりたいのは「日本を元気にする自動化」で、それはUiPathの日本法人を立ち上げた時から変わりません。AIを組み合わせた次世代の自動化によって、日本を支えている現場の人たちをエンパワー(能力を引き出す)することが、日本がDXで世界をリードする道だと思います。

 これまでの企業組織とシステムは、何千人もの乗客を乗せた巨大な客船のようなもので、堅牢だけれども機動性がない。目的地まではみんな一緒に決まったルートで行くしかありませんでした。

 これからは大海原を回遊する魚群のように、一人ひとりは機動的に動けるんだけれども、連携しながら組織を形づくり、臨機応変にルートを変えながら、最終的にはみんなが同じゴールにたどり着く。それがデジタル時代にふさわしい組織であり、私たちはそうした組織を実現するテクノロジーを提供していきたいと思っています。

 デロイト トーマツでは、みんなが共有するパーパスの下に戦略を立てたうえで、AIを燃料に見立てて、変革の原動力としていく組織を「AI-fueled organization」と表現しており、それはいま長谷川さんがおっしゃったデジタル時代の組織像に近いものがあります。

 一方で、私個人としては、AIやオートメーション技術で人の仕事はどう変わるべきかという問いを、いつも自分に投げかけています。現時点での私なりの答えとしては、誰もが気づいているけれど、誰も解決できていない社会課題や地球規模の課題に挑戦し続けていくことではないかと考えています。

 AIやオートメーション技術で捻出した時間を、そうした課題の解決に充てる。そして、少しでも解決できたら、そのプロセスをAIやオートメーション技術で仕組み化して、さらに次の課題にチャレンジする。その繰り返しが、やがて大きな課題の解決につながるんじゃないかと思います。

下川 自動化された業務において企業が差異化を図ることは難しいので、自動化の領域が広がるほど、企業にとって何で差異化するかという戦略の根幹部分がより重要になってきます。その部分を支援することが私たちコンサルティングファームの使命としてより大きくなりますし、これからのチャレンジだと思います。

 そこで当社では、ストラテジーと、AIを活用したアナリティクス、そしてM&A(合併・買収)の3つのチームが一体となって、企業が未知の領域で価値創造していくことをサポートするサービスを強化しているところです。

長谷川 少子高齢化と生産年齢人口の減少によって、企業では部下のいないマネジャーや中堅社員が増えています。そうした人たちが、大きな社会課題を解決したり、未知の領域で価値創造したりすることは難しいと思います。

 でも、その人たちがAIとRPAを自由に使えるとしたら、どうでしょうか。定型業務を指示すれば誰よりも速く処理できるし、データから学習してどんどん賢くなる部下です。そういう部下を50人でも、100人でも使って、どんどん新しいことにチャレンジしなさいと言われれば、「よし、やってみよう」という気になる人が多いのではないでしょうか。それが現場を元気にして、組織を活性化し、新しい価値を生み出していく日本型DXではないかと、私は思います。

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*1 出所:三井住友銀行「SMBCグループ二十年史」、三井住友フィナンシャルグループ「2019年度決算 投資家説明会」資料(19ページ)
*2 出所:茨城県報道発表資料「令和元年度RPA導入による効果について
*3 出所:Gartner、2022年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表