「言葉」を手に入れた
チャットGPTの衝撃

 チャットGPTの登場を受けて、「人間の仕事は人工知能(AI)に奪われるのではないか」という質問をよくされる。しかし、筆者はこの質問自体がナンセンスだと考えている。なぜなら、AIに仕事を奪われるかどうかは、チャットGPTの理解において、本質的な話ではないからだ。

 たしかに、現存する仕事の多くは、チャットGPTをはじめとするAIがさまざまな業務に進出することで、大きな影響を受けるだろう。なかには、取って代わられるものもあるかもしれない。特にホワイトカラーと呼ばれる知識層への影響は大きいと考えられる。

 2010年代の第3次AIブームで、機械学習の一つである深層学習(ディープラーニング)の進化を、筆者は「機械は眼を手に入れた」と表現した。見る、判断する、そして行動する──。これはすべての生物の基本で、AIの世界では「身体性」と呼ばれる。