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写真家と社会哲学者のコラボレーション
ヤン・アルテュ=ベルトランは1990年以来、およそ90カ国を訪れ、空から見た写真を撮り続けている。これらの写真のコレクションは地球の姿を克明に伝えている。
アルテュ=ベルトランは自身の作品を「誘(いざな)い」と名づけた。そこには、「地球と人類の進化に思いを馳せ、次世代にどのような地球を残すかを決めるのは、いまという時代を生きる我々の使命だと知ってほしい」との思いが込められている。ほとんどの写真がヘリコプターから撮影されたもので、さまざまな自然の息吹、人々の生活様式、そして近代文明がそれらに与えた影響が浮き彫りにされている。
氏の作品は、数多くの書籍、世界各都市での屋外展示、ウェブなどで広く紹介されている。一枚一枚の写真には、データを散りばめた説明文が添えられており、氏によれば、写真と説明文はけっして切り離せないという。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』は、ヤン・アルテュ=ベルトランの仕事に畏敬の念を表して、チャールズ・ハンディに寄稿を依頼した。彼に6枚の写真を選んでもらい、そのそれぞれについて「変わりゆく世界で企業が果たすべき役割について、何を示唆しているか」をテーマに筆を執ってもらったのである。
ハンディは撮影にこそ同行していないが、アルテュ=ベルトランと同じように大所高所から、今日のビジネスや社会を俯瞰し、そこに取り巻く重要な問題に思いを巡らせた。なおハンディはロンドン・ビジネススクールの教授を長年務めているが、近年では自らを「社会哲学者」と呼び、テクノロジー、人口構成、経済が社会と個人にいかなる影響を及ぼすかに関心を寄せている。
下位20%でも富を創造できる社会〔An Uphill Climb〕
詩にも詠われているように、遠くから眺める景色は美しい。リオデジャネイロのスラム街も上空から見ると、まるで色鮮やかなタペストリーのようで、どんな壁にも映えるだろう。ただし、少し離れて見ると、かえって見えなくなるものもある。人の暮らす気配は空からでは感じ取れない。辺りを包む空気も、そして失望感も伝わってはこない。
ブラジルは本来、豊かさを秘めた国のはずである。資源、人材共に潤沢なのだ。我々は長い間、このような資源から効率的に富を引き出すには資本主義が最適であると考えてきた。しかし資本主義の下では、富が均等に配分される保証はない。自然に任せていては富は分散しない。
繁栄の果実のほとんどが全人口の10%によって占められているのは、ブラジルに限らないのだ。古くから言われているがごとく、「20%の製品や顧客から全利益の80%がもたらされる」。正真正銘、そのとおりだ。