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いまだ直観に頼る経営者たち
事業の命運を左右する意思決定は、いつの時代にあっても難しいものだ。この数十年で事業のグローバリゼーションが進み、その困難さはとみに増している。しかも経営者にとって、選択の決断を迫られる機会や分析しなければならないデータは増える一方で、それらのデータをじっくり分析するための時間は減っている。
この点で、意思決定ツールの一つである「人間の直観[注1]」は、情報の収集・分析という手間のかかる仕事の代わりになる頼りがいのある存在であるようにも思える。
経営トップの間には、直観について取り上げた数々の科学的研究に「我が意を得たり」とばかりに、ややこしい選択を下さなければならない局面では勘こそ信頼できると考える傾向すらうかがえる。
2002年5月、エグゼクティブ・サーチ会社のクリスチャン・アンド・ティンバーズが実施した調査によれば、今日経営者の実に45%が、「事業を運営するうえで事実や数字よりも直観を信じている」という結果が出ている。
意思決定を専門とするコンサルタント、ゲーリー・クラインは、その著書Intuition at Workのなかで、この普遍的な知恵を取り上げ、直観は「意思決定プロセスの中枢」を占めており、分析はせいぜい「直観による意思決定の支援ツール」にすぎないと説明している。
直観信奉はわからないでもない。人は現世において迷った時、古来より神秘的な力にすがってきた。ただし、これは危険なことでもある。たしかに直観は、意思決定の重要なパラメーター(変数)の一つである。
意思決定において直観をないがしろにしてはならないことは、意思決定において道義心をなおざりにしてはならないことに等しい。ただし、直観が理性に代替しうると考えるならば、それは危うい妄想に取りつかれているとしか言いようがない。
厳密な分析を忘れた直観とは、うたかたのものであいまいな指針であり、成功よりも大惨事を招く公算が大きい。高度に複雑化し変化の激しい環境下では、ますます直観が重要になってくると論じられているが、実際はその逆である。