斬新なビジネスを生み出す「便乗」戦略を活用せよ
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サマリー:人は、ビジネスにおける問題に対して、教えられたやり方で取り組みがちで、型破りな組み合わせに気づくことができない。しかし、一見無関係に思える既存のシステムやネットワークを活用した「便乗」戦略を活用すれば... もっと見る、斬新なビジネスを生み出し、収益源を多様化し、製品の魅力を高めて露出を増やすことができる。本稿では、コカ・コーラなどをはじめとする便乗戦略を活用した企業やビジネスの事例を紹介する。 閉じる

コカ・コーラの流通網を活かした「便乗」戦略

 以前、ブラジルのアマゾン地域にある、ボートでしかアクセスできない辺境の地を訪ねたことがあった。人々は環境保護地区に暮らしており、都市部から隔絶されているために十分な現金がなく、ごくわずかな工業製品しか持っていなかった。筆者が到着すると、彼らはアマゾン川で取れたおいしい魚など、食べたことのない料理を、コカ・コーラと一緒に振る舞ってくれた。

 場違いな感じがした。コカ・コーラは手に入るのに、それ以上に生活に不可欠な物資はなぜないのか。そのような疑問を持ったのが自分一人ではなかったことを、当時は知る由もなかった。

 数年後、私はジェーン・ベリーとサイモン・ベリーという英国人夫婦のことを知った。彼らは、サハラ以南のアフリカで5歳未満の子どもの死因2位である下痢の問題を解決するために、コカ・コーラの流通ネットワークを利用できると気がついた。

 下痢の症例の大半は安価な市販薬で治療可能だが、そうした薬はあまり出回っていなかった。ベリー夫妻は、コカ・コーラの流通ネットワークを活用すれば、物資の届きにくい地域に薬を届けられるのではないかと考えた。そこで2人は、木箱に詰めたコカ・コーラの瓶のすき間に収められる、下痢治療薬入りの三角形のパッケージをデザインする。そして、非営利団体のコーラライフを設立し、ザンビアでのトライアルに向けて資金集めを行った。