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わずか5%の先駆的企業が行う社会的な取り組み
大企業や中堅企業でサステナビリティを担当している人なら、自社の環境に対する取り組みがどの程度進んでいるか、おそらく見当がついていることだろう。もしかすると、資源使用量の削減計画や排出量削減目標、脱炭素プロジェクトが進行中かもしれない。
企業ガバナンスに関わっている人も、規制だけに留まらず、業界のベストプラクティスを遵守するために自社が従っているルールや手順を挙げられることだろう。
だが、企業のESG(環境、社会、ガバナンス)課題の社会的側面は、目標の設定が難しく、進捗具合の測定も容易ではない。「社会的な」という言葉の一貫した定義もない。ここでいう「社会的」とは、従業員やサプライチェーン、地域社会の人々のウェルビーイングを改善する活動やプログラム全般を意味する。これには、地域社会へのインパクト措置や従業員ウェルネスプログラム、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)イニシアティブなどが含まれる。企業の社会戦略に関して、「どのくらいうまくやれているか」という問いへの答えを見つけるのは簡単ではない。
経営コンサルティング会社カーニーが602社を調査した「カーニー社会的パフォーマンス指数」(KISP)では、有効な社会戦略を構築するうえでの課題が明らかになった。たとえば、社会的プロジェクトの経済的インパクトを測定している企業は半数以下だった。また、社会的イニシアティブを実施するに当たり、外部の専門家の助けを得ている企業は3分の1にすぎなかった。社会的アジェンダで最も話題の領域であるDEIにおいてでさえ、戦略はいっさいないという企業が27%、さらにDEIに関しては応急の戦略しかないと答えた企業が20%に上った。社会的側面におけるパフォーマンスがまちまちなのは、特定の業界や国だけでなく、あらゆる場所で見られる現象だ。
だが、KISPの調査によると、ごく一部の企業(5%)が先進的な社会的戦略を取っていることがわかった。これらの企業は、社会的戦略の設定、オペレーション、インパクト、そして測定の基準において、100点中90点以上を獲得している。本稿では、社会的インパクトに関して先駆的な取り組みを行ってきた企業から、私たちが学べる5つの教訓を紹介しよう。
企業戦略と一致させる社会的プログラムを立案する
一般的に、企業にとって最も効果的な社会的イニシアティブは、既存の経営戦略と一致し、社内の能力を活かせるものである。ヘルスケア企業が途上国で無料の予防医療を提供する場合、すでに持っている知識や人的ネットワーク、評判を活用することになる。テクノロジー企業が、本社やサテライトオフィスがある低所得地域に、最先端のデジタルラボの建設資金を提供するような場合も同様だ。