DEI担当者は感情労働を強いられている
Illustration by Pablo Caracol
サマリー:感情労働というと、社外の人たちと向き合う顧客サービス系の職種の人たちが強いられるものというイメージが強いかもしれない。しかし、筆者らは社内の人たちと向き合う職種の中でも、特にDEI(ダイバーシティ、エク... もっと見るイティ、インクルージョン)担当の役職者が感情労働を強いられ、燃え尽き症候群に陥っていることを突き止めた。本稿では、こうしたDEI担当者たちを支援するために、企業などの組織に何ができるのかを解説する。 閉じる

燃え尽き症候群に陥るDEI担当者たち

 感情労働、すなわち感情の制御と修正を求められる状況は、多くの職で珍しいことではない。これまでこのテーマを取り上げた研究のほとんどは、社外の人たちと向き合う顧客サービス系の職種に着目してきた。顧客から不快な態度を取られても、微笑みを浮かべてフレンドリーに対応することを要求される人たちである。しかし、最近のある研究では、同僚やそのほかの社内のステークホルダーと関わる人たちも、感情労働を強いられるケースがあると示唆されている。

 筆者らはその研究をさらに発展させることを目的に、社内の人たちと向き合う職種の中でも、ある特定のタイプの職に就いている人たちの経験を調べた。その対象者は、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)担当のプロフェッショナル、そしてDEI関連の業務を多く担っている人事担当のプロフェッショナルである。

 DEI専任の役職に就いている人の数は、この10年間で2倍以上に増加した。2020年に白人警官の暴行により黒人男性ジョージ・フロイドが死亡する事件が起きて以降は、その増加のペースがいっそう加速している。フォーチュン500に名を連ねる米国企業の半分近くは、最高ダイバーシティ責任者、もしくはDEI担当の幹部を設けている。また、数多くの組織は、人事部門のプロフェッショナルが担うDEI関連の役割を大幅に拡大させてきた。