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ビジネススクールで学ぶ範囲を超えた気候変動の課題
気候変動に関する厳しい情報開示規制の登場により、企業は新たな需要に対応するためのスキルを備えた人材を緊急に必要としている。しかし、この課題に不可欠な学際的スキルを持つプロフェッショナルは、ほとんどいない。ビジネススクールは、低炭素社会への移行に向けてリーダーシップを発揮するために、次世代の人材を育成する絶好の機会を与えられている。しかし、この課題は、現在のビジネススクールで学ぶ範囲を超えたものだ。従来のビジネス教育の枠を超えた、学際的なアプローチが求められている。
ビジネススクールが力を入れるべき理由
気候変動に関連する活動の透明化に向け、世界的なシフトが進行している。米国証券取引委員会(SEC)は、上場企業に対して気候変動に関する情報開示を義務づける新規則の最終決定を目前に控えている(編注:2024年3月6日に米上場企業に温暖化ガス排出量の開示を義務づける規則を採択した)。同時に、カリフォルニア州では2023年10月に気候変動開示法案SB261とSB253が成立した。同州法は、欧州連合(EU)の情報開示の政策や、その他の新しい国際的な情報開示の要件と一致している。また、英国の移行計画タスクフォースが提案しているような規定もある。
カリフォルニア州では、企業は2025年の直接排出量を2026年までに、スコープ3(訳注:サプライチェーン全体の温暖化ガスの排出量)を2027年までに報告しなければならないと規定している。違反した場合の罰金は、年間50万ドルに達する可能性がある。企業は、気候変動関連の財務リスクとそれを軽減するための計画を開示する報告書を作成しなければならない。ある調査によると、フォーチュン1000の73%がSB253とSB261に該当すると推定される。
しかし、筆者らの調査によると、企業のサステナビリティに関する情報開示の質は基準を下回っており、必要なデータの開示は不完全で、開示内容も混乱している。大企業は、工場などからの直接排出を報告することが多く、電力消費による汚染を報告することもある。しかし、総排出量の4分の3を占める間接排出量を明らかにすることはほとんどない。フォーチュン300のうち、スコープ3の排出量を公開しているのはわずか61.2%で、そのデータの報告も一貫性がない。企業内のデータ収集と報告能力を向上させる必要がある。