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サステナビリティ活動の影響力をどう拡大すべきか
サステナビリティ関連の取り組みに関して、漸進的な変化では不十分だと考えるビジネスリーダーが増えている。世界各国のイノベーション精神旺盛なリーダーたちは、まったく新しい価値体系、すなわち利益よりも社会的責任を明確に優先させる考え方に基づいて組織をつくり、プロダクトを提供することを目指すようになっている。
研究者たちは、こうした動きを「市場における代替的選択肢」をつくり出すものと表現する。ここで念頭に置かれているのは、マイクロブルワリー(小規模のビール醸造所)、有機農家、フェアトレード認証済みの流通業者、小出力のラジオ局など、社会的動機を前面に押し出したプロダクトや組織構造などである。
この種の取り組みの中には、潤沢な利益を生むニッチ市場をつくり出せるものもあるが、残念なことに、ほぼすべてのケースが成長の過程で深刻なジレンマに直面する。
インパクトを最大化させるという点では、リーダーはたいてい、活動の規模を拡大させて、できるだけ多くの組織を取り込みたいと考える。しかしその半面、活動の土台を成す中核的な価値観を守り通すためには──つまり、同じ価値観を真に抱いていない企業にアイデアの上っ面だけを「盗用」されたり、自社の価値観が薄まったりすることを避けるためには──規模の大きい既存勢力を活動から排除しなくてはならないケースもよくある。
こうした点でうまく適切なバランスを取ることはしばしば難しく、その結果として、活動が社会にインパクトを与える有効性と可能性が制約されてしまうことが多い。
1990年代には有機認証活動、2000年代にはフェアトレード認証活動が広がり、ネスレやスターバックスなどの多国籍企業が参加するようになると、これらの活動は進歩的な特徴を失い、市場の既存勢力によって、単なる新しいマーケティングツールとして利用されるようになった。それに伴い、社会問題や環境問題への意識が高い消費者でも、このような代替的な選択肢と大量生産品を見分けることが難しくなっている。そうすると、もともとこの種の取り組みを行っていた業者がニッチ市場をコントロールできなくなり、長い目で見ると、競争力を失いかねない。
一方、このような活動が既存勢力を排除して、当初の価値観を断固として守り続けているケースもある。しかし、その場合は、活動が市場において傍流のままになり、社会に対して長期的なインパクトを生み出せない可能性がある。
当初のマイクロブルワリー活動や小出力ラジオ局はおおむね、大企業を締め出していたが、それと引き換えに、比較的狭いニッチ市場に押し込められ、成長の余地は限られていた。では、活動が本来の価値観を守りつつ、規模を拡大させ、社会へのインパクトを広げていくためには、どうすればよいのか。