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給与の高い新入社員が既存社員に与える影響
企業は優秀な人材を獲得するために、新規採用者に対して、同様の役職に就いている既存の社員よりも高い給与を支払うことが多い。これはいまに始まったことではない。しかし昨今は、米国政府による規制の内容が改められたこと、そして新しいテクノロジーが普及したことにより、多くの業種で給与の透明性が飛躍的に高まっている。その結果として、昔に比べると、社内の給与格差が認識されやすくなった。
しかも、米国商業会議所のデータによると、2024年も米国の労働力人口は減少することが予想されている一方、世界の3万人以上の働き手を対象にした調査で2024年には給与が平均4%上昇すると見込まれている。つまり、今後も新規採用者と既存社員の給与格差は拡大し続ける可能性が高いと見てよいだろう。
このように給与の高い新規採用者が入ってくることにより、既存社員、とりわけトップレベルの成績を上げている社員にどのような影響が及ぶのか。新しい人材を獲得したいというニーズと、社内の給与格差がますます目につきやすくなることのリスクを緩和したいというニーズのバランスを取るには、どうすればよいのか。
これらの問いを検証するために、筆者らは所属するヴィジールの顧客に関するデータベース「ヴィジール・コミュニティ・データ」を用いた。このデータベースには、米国、カナダ、欧州の100社近い企業の400万人以上の社員に関する2018~2023年のライブデータが記録されている。
この研究で筆者らが調べたのは、これらの企業における成績の良い社員と成績の悪い社員の在職期間と給与についてのデータだ。統計的な手法を用いてデータを分析し、パターンやトレンドを見出せないかと考えたのである。特に知りたかったのは、自分より高い給与を受け取る同僚が職場に加わった後、既存社員の退職する確率がどの程度高いのか、そして既存社員の給与を引き上げた場合に、退職する確率がどの程度低下するのかという点だった。
研究によりわかったこと
最初の分析で明らかになったのは、自分より給与の高い同僚が加わった直後に昇給があった人は、そうでない人よりもかなり長い期間、その職に留まる傾向があるということだった。それに対して、すぐに昇給がなかった人は、退職する確率が高かった。