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マイクロストレスの要因を3つに分類する
疲れ切っている、すり減ってしまった、やる気が出ない、燃え尽きてしまった──どれも、仕事やプライベートで味わう感覚を表現する際によく使われる表現だ。しかも、事態は悪化の一途をたどっている。
i4cp(企業生産性研究所)が2021年に行った調査によれば、「燃え尽き症候群は、従業員が新たな仕事や昇進の機会、昇給、そして何よりも持続的な柔軟性といった形で救いを探そうとする主な要因となっている」という。また、大規模な組織(従業員数1000人以上)で調査対象となった人々の実に67%が、自分の組織における潜在的な人材流出の最大の要因として燃え尽き症候群を挙げた。
これを仕事のペースや仕事量のせいにするのは簡単かもしれないが、筆者らの調査から浮かび上がったのは、真の原因はもう少し複雑である場合が多い、ということだ。問題は、仕事量が増えたことよりも、仕事を取り巻く共同作業が爆発的に増えたことにある。筆者らが近著The Microstress Effect(未訳)で論じたように、それが新たな形のストレスを生み出しているのだ。
著書のタイトルにある「マイクロストレス」とは、日常生活における気づかないほど些細な人との交わりから生じ、知らないうちに容赦なく蓄積していく小さなストレスを指す。一つひとつのマイクロストレスは対応可能に思えるかもしれないが、それが積み重なれば大きな負担となる。
筆者らは、マイクロストレスの14の原因を特定し、それを3つのカテゴリーに分類した。物事の遂行能力を低下させるマイクロストレス(例:責任の急増)、感情面の余裕を奪うマイクロストレス(例:他者の管理)、アイデンティティを揺るがすマイクロストレス(例:自身の価値観と一致しない目標を追求しなければならないというプレッシャー)の3つである。
・役割や優先事項をめぐる共同作業者との見解の相違
・相手を信頼してよいのか確信が持てないこと
・権限を持つ人物の予測不能な行動
・多様かつ大量の共同作業の要請
・仕事や家庭での責任の急増
・他者の成功とウェルビーイングを管理し、それに責任を感じること
・対立的な会話
・自分のネットワークへの信頼の欠如
・ストレスを広める人々
・政治的な駆け引き
・自身の価値観にそぐわない目標を追求しなければならないというプレッシャー
・自信や自己の価値、またはセルフコントロールへの攻撃
・家族や友人との消耗的または否定的な関わり
・自分のネットワークの断絶
筆者らの調査は当初、多国籍組織のハイパフォーマー300人を対象としていたが、マイクロストレスの一般的な原因への理解を深めるべく、過去1年間でさらに世界中の1万1000人以上の評価も行った。そうした調査を通じて浮かび上がったのは、ひどい上司に当たったり、プレッシャーの強い企業文化の職場に属していたりすることだけがマイクロストレスの原因ではないということだ。
しかも、状況はいちだんと悪化している。テクノロジーの進歩や、よりアジャイルで非階層的な組織へのシフトがマイクロストレスを増大させ、生産性のみならず全般的なウェルビーイングも脅かしている。また、さらに困ったことに、仕事上で出会う人だけでなく、プライベートで関わる人もマイクロストレスの発生源になる可能性もある。しかし、筆者らの研究によれば、こうしたストレスの範囲を特定できれば、人生を大きく変える軌道修正のアクションを取ることは可能だ。
マイクロストレスが最大の影響を及ぼす場所
フォローアップ研究を通じて明らかになったのは、マイクロストレスが職場や家庭において、あらゆる人に影響を及ぼしているということだ。ただし、苦しみの度合いは、人によって異なる。