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米国が分断を乗り越えるためのヒント
2024年7月13日に発生したトランプ前米大統領の暗殺未遂事件は、米国人に社会が二極化して政治的暴力が吹き荒れた激動の1960年代を思い起こさせた。選挙をめぐる暴力は他の国でも頻発しており、2024年に入ってからもインドやメキシコ、パキスタンなどの選挙が暴力に汚されてきた。
米国が再び、激しい分断の時代に突入する中、暴力を克服し、未来に向けて「より完璧な連邦」を築くという合衆国憲法の夢はますます遠のいているように思える。橋渡しの役割を担うべき教会や学校などの基本的な市民向け組織ですら、分裂したり、攻撃対象にされたりする。米国にとって、そして二極化した世界にとって、現状を脱する出口は存在するのだろうか。
筆者は2016年から2023年の7年間にわたって、オックスフォード大学で「意外な連合」を構築するプログラムを運営してきた。参加者は、100カ国を超える国々から集まった現職および将来の公的リーダー1000人以上。この極めて多様な環境──リベラルデモクラシーを信奉していない参加者も多数いた──で成功した取り組みは、米国や他の国々でも効果を発揮する可能性がある。少なくとも、試してみる価値はあるはずだ。
オックスフォードでの筆者の取り組みには、世界中の多くのケーススタディから得たインスピレーションが役立っていた。ナイジェリア北中部に位置するカドゥナ州での「カドゥナ平和委員会」からの教訓を紹介しよう。
カドゥナ州は宗教や民族、土地不足、資源アクセスの不平等によって分断されたナイジェリアの縮図のような地域だ。何十年にもわたり暴力が横行してきたが、その一部は予測可能で、選挙の際に対立候補を威嚇する目的で暴力が使われてきた。