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学ぼうとする姿勢のマイナス面
元大学教授で、ある分野の専門家であり、現在テクノロジー企業の上級幹部を務めるポールは、業界の権威ある会議に出席した。自身の学ぶ姿勢を誇りとしている彼は、業界をリードする専門家たちに囲まれ、まさに水を得た魚のようだった。最新のトレンドやテクノロジーについて熱心に質問して専門知識を吸収し、理解を深めていた。
ところが休憩中、別の参加者にかけられた一言は、思いがけぬものだった。「素晴らしい質問ぶりですね。あらゆることに学びがあった、駆け出しの頃を思い出しますよ」。ポールは、ベテランの専門家ではなく、入門者だと思われたのだ。
この一言をきっかけに、ポールは自分を顧みた。学習意欲や柔軟性を見せるつもりで取っていたアプローチが、逆に経験不足や権威のなさを印象づけていた可能性がある。さまざまな会合での同じような反応を思い出し、ポールは矛盾に気づいた。勉強熱心なおかげで、知識は豊かになっているが、自分の権威や周囲からの評価を不用意に低下させてしまっているのではないか。
優れたリーダーが優れた学習者であることは広く認められているが、学ぼうとする姿勢にはマイナスの側面もある。慎重にコントロールしなければ、他者から見てリーダーとしての能力が低い、専門知識が足りない、仕事が遅いといった不利な認識を持たれる可能性がある。
360度フィードバックの結果、ポールは、よいことだと思っていた自身の学ぶ姿勢が、人に「優柔不断で、受け身で、能力が低い人間」という認識を植えつけていたことに気づいた。彼のステークホルダーに具体的な点を尋ねると、一様に「質問が多すぎる」と答えた。
では、どうすれば学習意欲が自分の成長を妨げ、人からの評価を損なうのを防ぐことができるのだろうか。
学習意欲の意図しない影響
ポールのように、学ぶ姿勢が染みついているリーダーは、頻繁に質問することで送られるある種のサインに気づかない場合がある。その好奇心旺盛な学習行動は、以下の3通りの誤解をステークホルダーに与える可能性がある。