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あらゆる女性が偏見にさらされている
筆者らの著書Glass Wallsの中に、ある新聞社の女性社員が上司から、子どもを持つ予定はあるか尋ねられたというエピソードが登場する。彼女が「いつかは」と答えると、上司は「君のキャリアはそこまでだね」と返した。その後、上司はこの社員をニュースルーム内で何度も異動させ、昇進させることなく、夜勤を命じた。結局、この女性は退職した。彼女に子どもはいなかったが、会社は「将来的に」子どもを持ちたいという願望を理由に、彼女のキャリアを台無しにしたのだ。
親になった女性は、職場で男性とはまったく異なる経験をする。男性は「父親賃金プレミアム」を手に入れ、子どものいない男性よりも高い収入を得られるが、女性は賃金や昇進の機会において「母親ペナルティ」に直面する。妊娠中の女性も、雇用主に妊娠を知らせるのをためらうほど、ひどい差別にさらされている。
米国では15歳から50歳の女性のほぼ半数が子どもを持っていない。そうした女性は男性と同様に職場で優遇されていると思われがちだが、そのようなことはない。似たような教育水準の女性を比較したところ、子どものいない女性も子持ちの女性と同様に賃金のジェンダーギャップにさらされていた。
母親でなくても、さらには子どもを望んでさえいなくても、女性は職場で「母親の壁」に直面している。単に女性であるというだけで、潜在的な母親、あるいは母親になるべき存在と見なされ、それが職場で「壁」をつくり出すしているのである。
913人の女性リーダーを対象にした調査やソーシャルメディアの投稿を活用した筆者らの研究で、子どもを持たない多くの女性が重大な偏見や差別を経験している実態が明らかになった。「母親の壁」は、子どもを持つ予定の有無に関係なく、「あらゆる」女性のキャリアの足を引っ張っている。本稿では、筆者らが発見した具体的な偏見の一部を紹介する。
「子どもを産むかもしれない」バイアス
いつか母親になるという前提のせいで採用や昇進を見送られた、という話を多くの女性から聞いた。高等教育機関のある女性リーダーは、「家族を持つ計画があり、産休が必要になるかもしれない」という理由で昇進を打診されなかったという。アニメーターの女性は面接官から将来の家族計画について尋ねられ、「子どもはほしくないと伝えた瞬間、疑われ、嘘つきと思われているように感じました。この質問をした会社は私を採用しませんでした」と語る。