不正を働く従業員の典型的な3つのタイプ
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サマリー:ビジネスリーダーは組織を守るために、不正行為を行う従業員の典型的なタイプを理解する必要がある。筆者らによれば、不正を働く従業員には3つのタイプがあり、これを把握し、早期に危険信号を察知することで、損失... もっと見るや企業イメージの悪化を防げるという。本稿では、典型的な3つのタイプである、意図的な加害者、偶発的な加害者、正義の加害者がどのような人たちなのか、事例も交えて紹介する。 閉じる

ビジネスリーダーが危険信号を素早く見極めるために

 米国史上最大の自治体詐欺事件は、銀行の秘密口座、評価の高いクォーターホースの厩舎、そして入り組んだ偽造請求書を中心に展開した。イリノイ州ディクソン市の元会計監査官リタ・クランドウェルは地域社会の目と鼻の先で、5370万ドルという途方もない金額を横領した。この大胆な行為は、内部統制の甘さ、監査法人の油断、疑うことを知らない銀行員、そして20年以上にわたる市議会議員や住民の警戒心の欠如によって助長された。

 ディクソンの事件は極端なケースだと思われるかもしれないが、詐欺行為の被害額は推定数兆ドルに上る。しかもここには、発覚していない、あるいは未報告の被害は含まれていない。

 では、ディクソンで起きたような大規模な不正行為に対して、シニアリーダーシップチームはどのように組織を守ればよいのだろうか。筆者の一人であるケリーは、著書Fool Me Onceの中で、長年ホワイトカラーの加害者、被害者、内部告発者のケースを分析し、インタビューを行ってきた経験から、不正を働く従業員の典型的な3つのタイプを特定した。

 ビジネスリーダーは、危険信号を素早く見つけて将来の損失やイメージ悪化を防ぐために、この3つのタイプを理解する必要がある。

意図的な加害者

 意図的な加害者は多くの場合、私腹を肥やし、贅沢なライフスタイルを送ることに重点を置く。あたかも自分にはルールが適用されないかのように振る舞い、内部統制が緩い環境で悪事を働く。たとえば、クランドウェルは不正に得た利益をクォーターホースや不動産、高級車や馬の競技会に費やした。職務分掌の欠如と盲目的な信頼によって、彼女はそれを長期間、続けることができた。

 意図的な不正は最も数が少ないとされるが、どのような組織にとっても最も危険なタイプである。たとえば公認不正検査士協会(ACFE)の「国民への報告書」によると、財務諸表詐欺は件数が最も少ないものの、損失額の中央値は59万3000ドルと最も大きい。

 ミシガン州の実業家ナジーブ・カーンは、1億8000万ドルの不正小切手取引を首謀し、世界有数のクラシックカーコレクションを手に入れ、豪勢な休暇を過ごし、高級な邸宅や美術品を購入した。3つの銀行間で何百もの小切手を浮かせる(処理されるまでの時間差を悪用する)操作で口座の残高が実際以上に多くあると見せかけることで、みずからの小切手処理事業を成長させつつ、7300万ドルを懐に入れた。カーンの策略が破綻すると、彼の顧客であった約1700の中小企業や非営利団体、慈善団体などが損失を被り、従業員の解雇を余儀なくされた。