-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
ないがしろにされがちな退任するCEOの心情
どの取締役会にも共通する願いは、波乱のない円滑なCEO交代だ。先取的かつ戦略的であるだけでなく、将来の成長に向けて組織の体制を整えるためのリーダー交代である。このプロセスに対処するためのベストプラクティスは十分に解明されている。早い時期から着手して内部候補者を数人特定・育成し、組織のニーズとの適合性を評価したうえで、適任者を選抜する。そして、選んだ後継者をCEOに就任させるのに細心の注意を払うということだ。
こうした客観的手順を重視することは役に立つ。だからこそ、リーダー継承に関する研究の大半が「ハウツー」に焦点を当てているのだろう。しかし、そうした研究で置き去りにされがちなことがある。中心人物の一人、退任するCEOの行動と心情であり、継承プロセスが進むと特にないがしろにされがちだ。
多くのCEOはトップの座に就くために長年奮闘してきた。在任中は企業文化の育成、戦略的ビジョンの策定、オペレーションの改善のために長時間仕事をする。多くのCEOにとって、経営トップの座は仕事というより、アイデンティティそのものだ。それゆえ、CEOを退く時には精神的に動揺しやすい──この点について、取締役会は配慮する必要がある。退任するCEOの心理状態は、継承期間中に彼らがどう考え、どう行動するかに影響を及ぼし、深刻な結果を招く場合もあるからだ。