よいサクセッションが実現する企業の条件とは

編集部(以下色文字):峰岸さんは、当時最年少の39歳でリクルート(現リクルートホールディングス)の執行役員に就任するなど若い頃からご活躍でしたが、キャリアの早い段階で、CEOや役員になりたいという意識をお持ちでしたか。

峰岸(以下略):それはまったくありませんでした。若い頃から出世が第一というような意識を持っている人は、経営者に向いていないと思います。

「企業」とは、世の中にある課題を最も効率的に解決し、社会に豊かさを提供することを使命とした組織単位です。企業の使命が、その企業で働く人の持つ何らかの問題意識に合致し、従業員が日々の業務を通じて能力を伸ばし、高いパフォーマンスを発揮できれば、結果として与えられる個人のミッションがさらに大きくなる。この繰り返しの中で、次のポジションやキャリアが構築されていくのではないでしょうか。

 ただ私の場合は、正直なところ、大人がワイワイ楽しそうに働きながら、新しいサービスを生み出し続けている「装置としてのリクルート」に興味がありました。自分が独立してやりたいことをする時のために、その秘訣を学んで3年で辞めることを前提に入社したのです。当時は同じような考えの人が多かったと思いますが、私は秘訣を理解しようと仕事に没頭しました。

 そうした中で、ある時、秘訣となるポイントを理解できる瞬間が訪れるのです。ではそろそろ辞めようかなと思うと、「今度はこの仕事をやってみないか」と社内から次々にオファーが来ます。そのたびに、辞めるか、オファーを受けるか考えました。結果として、面白いオファーを受け続けていまに至ります。

 最初に述べたように、企業は社会の中で大きな役割を担っており、持続させるためにもサクセッションは非常に大事なものです。ただ、よいサクセッションは、よい企業でしか起こりえないと考えています。

 よいサクセッションにつながる「よい企業」というのは、具体的にどのような企業ですか。

 私が思うよい企業の前提条件は、まずパーパスが明確にセットされていることです。リクルートでは、ビジョン、ミッション、バリューズがこれに当たります。文言としてあるだけでなく、パーパスの方向性が、その企業が属する産業の課題を解決し、変革をリードするものになっていなければなりません。それに加えて、厳格な事業マネジメントと厳格な組織人材のマネジメントが機能し、この3つが密接かつシームレスにつながることが重要です。

 つまり、パーパスに共感して集まる人が厳格なシステムでマネジメントされ、長期、中期、短期のアジェンダの遂行を実直に行っていく組織がよい企業だと考えています。リクルートの場合は、それに加えて大切にする価値観であるバリューズとして「個の尊重」を持っている点が大きな特徴です。