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中国のハイブリッドな「国家資本主義」システムの強み
1978年に鄧小平は「改革開放」政策を打ち出し、中国の発展のために西洋の技術とノウハウを活用しようと考えた。これは政治的にリスクの高い動きだった。社会主義の下で中国は経済的に発展途上であり、資本主義の西側諸国のほうが優れているという暗黙の前提に、中国共産党内のイデオロギーを信奉する強硬派が反発したのだ。しかし鄧小平は、中国の近代化には実用主義と謙虚さの両方が必要であることを認めていた。
現在、その役割分担は逆転しつつある。中国のハイブリッドな「国家資本主義」システムが西側諸国のモデルに勝るかどうかを語るのは時期尚早だが、中国には否定できない強みがある。
オーストラリア戦略政策研究所によると、中国は64の重要な技術分野のうち53でリードしている。この成功は中央集権的な計画と統制の上に築かれたものだが、先進国でも新興国でも価格と品質で競争できるグローバルな勝者を生み出すという、冷酷な競争の産物でもある。中国の市場規模や、最新の優れたハイテク技術を求める消費者の熱意には、どの国もかなわない。
多国籍企業のリーダーは、現在の中国で成功するために、ある種の鄧小平流の実用主義と謙虚さを採用しなければならない。それを実践する企業は、中国経済の4つの主要な強みに倣って機会をつかめば、収益性の高いグローバルな成長を実現し、自国市場で優位に立てるだろう。
1. イノベーションのエコシステム
中国のイノベーションのエコシステムは、トップダウンの産官連携とボトムアップの中国人起業家の意欲を独自の形で結びつけている。政府が選んだ将来の成長産業に合致するスタートアップは、有利な政策や規制、さらには科学研究への集中投資を通じて繁栄できる。
イノベーションに対する「国家全体」のアプローチは、国の資源をほぼ無限に集結させる。オランダのラテナウ研究所によれば、中国のR&D費は1995~2021年の間に、182億ドルから6201億ドルへと、3299%増加している。同時期の米国は277%増だ。
中国は先端科学研究の世界的拠点になっている。『エコノミスト』誌によると、中国の科学者はインパクトの大きい論文を発表し、厳しい査読を経て著名な科学出版物に投稿されるという意味でも、いまや世界をリードしている。
中国の優れた技術力を何よりも証明しているのは、クリーン技術の分野だ。中国は現在、太陽光発電の主要部品であるソーラーウエハーやリチウムイオン電池の部品など、11の基幹技術で世界の生産能力の80%以上を占めている。さらに、中国はレアアースのサプライチェーンを支配しており、世界の採掘量の70%、加工量の90%を占めている。