企業は気候変動アクティビズムと対立せず、むしろ協力すべきだ
Yaroslav Danylchenko/Stocksy
サマリー:多くの企業が掲げる気候変動対策の目標は不十分な状態にあり、従業員をはじめとしたアクティビストからの反発が高まっている。こうした破壊的な気候変動アクティビズムに対して、企業が守りの姿勢を取ることは自然な... もっと見る反応である。しかし、企業のリーダーは、変化のための貴重なリソースとしてアクティビズムを活用するという、まったく新しいアプローチを開発できるはずである。本稿では、破壊的な気候変動アクティビズムを支援し、推進する意義とその実現に向けたヒントを解説する。 閉じる

企業の気候変動目標に対する進捗が遅延している

 MSCIグローバル指数の2024年4月の報告書によると、大半の企業の気候変動対策の目標は、気候変動の緊急事態への対応として不十分である。二酸化炭素排出量ネットゼロ(排出量から吸収量や除去量を差し引いた合計をゼロにする)への移行は、世界的には「急激に進んで」おり、より多くの企業が科学に基づく気候目標を自主的に設定し、排出量を公表している。その一方で、上場企業の目標が不十分なために、2026年7月までにカーボンバジェット(炭素予算:気温上昇を一定レベルに抑える場合に想定される温室効果ガスの累積排出量の上限値)を使い果たすことになる。

 オックスファムの調査によると、これらの目標はすでに不十分というだけでなく、実行可能な戦略に基づいたものでもない。2024年初めにはScience Based Targets(科学に基づく目標設定)イニシアティブ(SBTi)に参加している企業の従業員からも反発が起こり、企業がカーボンクレジットのネットゼロ目標に算入することを認める意向に対し、抗議する書簡を送付した。

 これらの目標は、気候危機に対する漸進的な対応や、気候に打撃を与えている「いつもの業務」が依然として変わっていないことを覆い隠している場合も少なくない。つまり、的外れの透明性であり、必要な変革ではないのだ。

 多くの企業が自社の気候変動目標から遅れていたり、進捗を誇張したりしている一方で、ユニリーバのように以前の野心的な目標を下方修正している企業もあり、市場や投資家の反応は複雑だ。ユニリーバはアクティビスト投資家として知られるネルソン・ペルツの支援を受けており、新しい目標ははるかに現実的だという見方もあるが、気候変動対策を牽引してきた企業が減速していることに、ビジネス界の適切なリーダーシップが失われるという懸念も出ている。

 問題の根源には、前進の勢いが弱いこと、時代遅れで気候に悪影響を与えるような慣行に固執していることがある。筆者らは、従業員、同業他社、市民活動家を中心とする急進的な当事者が企業に社会的責任を再認識させていることについて研究しており、企業が彼らと対立するのではなく、協力できる方法を提唱している。

なぜ企業は守りの姿勢になるのか

 破壊的な気候変動アクティビズムとは、企業自身によるものも含めて、気候に有害な慣行に抗議するさまざまな非暴力的実践である。このような活動家には社内外の関係者が含まれるだろう。最も一般的な実践は、気候に打撃を与える事業活動を妨害する、従業員のストライキによって企業を混乱させる、特定の顧客のために働くことを集団で拒否するといった市民的不服従だ。企業の気候変動対策の怠慢を指摘する直接的な抗議や内部告発も、破壊的アクティビズムである。気候変動対策を要求する株主アクティビズムや訴訟、従業員ストライキも増えている。