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エビデンスに対する誤ったアプローチ
たとえば、あなたは会社の倉庫従業員の時給に関するミーティングを主導しているとする。ここ数年、時給はインフレ率と連動して自動的に少しずつ引き上げられてきた。ある大手企業における研究では、賃金の引き上げが生産性を大きく向上させ、それによって利益も増加したという結果が示された。一人のチームメンバーがこの研究結果を引用し、あるアプローチを提案した。倉庫従業員全員に対して、一律2ドルの大幅な賃上げをすべきだと言うのだ。あなたならどうするだろうか。
このような場面で、ビジネスリーダーは次の2つの方向のいずれかに進んでしまいがちだ。提示されたエビデンスを神のお告げかのように受け入れるか、あるいは完全に無視してしまうのである。しかし、どちらのアプローチも誤りだ。リーダーはむしろ、関連がありそうなエビデンスと、それが特定の状況にどの程度当てはまるのかを、慎重に評価する議論を組み立てるべきである。
先述したシナリオの場合、賃金の引き上げが、自社にとって具体的にどのような潜在的インパクトがあるかを評価するために、いくつかの質問を投げかけることができる。たとえば、次のような質問だ。
・研究が当社の倉庫従業員にも応用できるかどうかを評価するために、その研究がどのような環境設定で行われたのか、より詳しく説明してもらえるか。
・当社の賃金は、同じ労働者を奪い合う他の雇用主と比べてどうか。そして、その研究結果とどのように比較できるか。
・その研究では実験が行われたのか。行われていない場合、賃上げが生産性を向上させたのか、それとも単に生産性を反映した賃金だっただけなのかを識別するために、どんなアプローチを用いたのか。