人生のあらゆる面にリーダーシップを発揮する

 私が過去20年間の研究とコーチングを通じて出会った人たちの多くは、満たされない思い、強迫観念または閉塞感を抱いていた。その原因は、自分の人生における可能性を諦めていることにあった。

 彼ら彼女らは、「仕事」「家庭」「地域社会」そして「自分自身」(知的好奇心、肉体面や精神面など)という、人生の4領域すべてにおいて、持てるリーダーシップ能力を発揮しているわけではない。

 我々はさまざまな役割を担っており、これらの役割の間には何らかの緊張がたえず存在している。とはいえ、従来の常識と反するが、それらの関係がゼロサム・ゲームであると決めてかかる理由はまったくない。

 そして、先の4領域すべてにおいて、優れた成果を追求するほうが理にかなっている。私はこのことを「4正面の勝利(フォー・ウェイ・ウインズ)」と呼んでいるが、言い換えれば、一つのために別の何かを諦めるのではなく、人生の4領域それぞれに共通する価値を見出すほうが賢い選択といえるのだ。

 これこそ、私がウォートン・スクールや世界各国の企業、その他のワークショップで教えている「トータル・リーダーシップ」プログラムの狙いにほかならない。

「トータル」という言葉には、全人格に関係するという意味が込められており、またこれに「リーダーシップ」とつけた理由は、あなただけでなく、あなたの周りの大切な人たちにもプラスに作用するように変化し続けていくことを意図しているからである。

 4正面の勝利についての評価は、人生の4領域それぞれにおいて、あなたが手に入れたいものとあなたが貢献できることを具体的に把握することから始まる。現在と将来を見渡し、あなたの大切な人たちについて、またこれら4領域それぞれにおいて、あなたが期待する成果について深く考えてみる。

 次のステップは、慎重に検討した実験を体系的に設計し実施する。つまり、短期間に何か新しいことに取り組み、人生の4領域すべてに及ぶ影響について見るのだ。実験がうまくいかない場合は、すぐさま中止または調整する。したがって、失うものはほとんどない。