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他者を指摘することがいかに挑発的な行動か
大規模NGOのサービス提供チームで働くクリスは、楽観的で、ユーモアのセンスも抜群の人気者だった。だが、自分のチームが半期報告書の提出期限を6回連続で破った(しかも1カ月も遅れた)時、クリスは軽く考えられなかった。そして、報告の遅れはチーム全体にマイナスになると、声を上げた。すると同僚たちは、クリスがユーモアのセンスを失ったことを批判した。クリスは意気消沈して、同僚たちの意見が正しいのだろうかと不安になり、どうしてよいかわからなくなった。
チームのやり方に懸念を示した時、それについての会話が始まるのではなく、自己防衛的な反応が起こり、懸念は無視され、それを表明した人物に批判が集中することがある。当事者意識が足りないとか、そもそも態度が悪いとか、そんなことを言う資格や権限があるのか、といった具合だ。いずれにせよ、会話はストップして、声を上げた人物は傷つき、不安になる。
こうしたダイナミクスは破壊的な影響を及ぼすが、実によくあることでもある。筆者は教員として、コンサルタントとして、そしてコーチとして、多くの意欲的なチェンジエージェント(変革の旗手)と仕事をしてきたが、彼らは自分の指摘が、周囲の人たちにとっていかに挑発的かを過小評価していた。建設的な批判に対する自己防衛的な反応を乗り越える簡単な是正策や解決策はない。だが、個人攻撃のように感じられてしまうものを、そうではなくする方法はある。重要なのは、現場のダイナミクスを見極めて、分析することだ。
自己防衛的な反応が生じる理由を理解する
自分が共犯者だと責められている気がする
あなたが提起した問題に自分が関与していると感じた人は、あなたの攻撃(自分が投資していることにあなたが疑問符を突きつけたためにそう感じる)によって、自分自身が不意打ち(あなたが自分の守備範囲を超えて声を上げたからそう感じる)をくらった気がするかもしれない。だから往々にして、あなたに反撃することによって自分を守ろうとする。このことを理解すれば、あなたまで自己防衛的な反応を示すのではなく、本来の懸念事項に焦点を戻しやすくなる。
あなたのポジションには一連の期待が伴い、懸念の表明はそれに反する可能性がある
バイオテクノロジー企業のプロジェクトマネージャーであるミンは、自分を含むプロジェクトマネジャーが、KPI(重要業績評価指標)を達成するため、品質に妥協していることに気づき、KPIに疑問を表明した。厳格かつ誠実にという会社の価値観と一致した指摘だったが、ミンの上司は歓迎しなかった。そしてKPIを擁護し、彼女の能力を疑問視するようになった。ミンは、この問題を指摘したことを「後悔して気分が悪くなる」ほどで、その状況から抜け出すために転職(それは会社にとっては大きな損失なる)も考えたという。
ミンが経験した反発は、周囲の期待に沿わなかったことに起因していた。ミンは、品質とパーパスに注力する姿勢は評価されると思っていたが、自分の仕事が、KPI(マネジャーたちが懸命に交渉してまとめたものだった)の達成具合のみによって評価されることを理解していなかった。マネジャーたちは、このKPIの設定に尽力していたのであり、ミンの仕事はチームがKPIを達成するよう管理することだと考えていた。だからミンがKPIに疑問を投げかけた時、自己防衛的な反応を示したのだ。
上司たちが厳しい反応を示す理由(ミンは、彼女のポジションに期待されることを行っていなかった)がわかると、次にまた旧態依然とした状況に疑問符を投げかければ、どのような個人攻撃を受けるか心の準備をできるようになった。
あなたは仕事上のポジションだけでなく、同僚の人生で非公式の役割を果たす可能性がある
たとえば、あなたは衝突を円満に収める調停者の役割を果たす傾向があるかもしれない。クリスはこのタイプで、日頃から、チームの仕事に遊び心をもたらしていた。それなのにクリスが声を上げたため(それは結果を思ってのことだったが)、チームメイトは、「きみはいつも通り面白いことを言っていればいい」という反応を示した。