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ITが競争環境を変えていく
あなたの会社に限らず、産業界全体にいえるが、ライバルを突き放すのはいっそう難しくなっている。我々が実施した調査によると、1990年代半ば以降、つまりインターネットとITが普及してからというもの、アメリカにおける企業間競争はかつてないほど厳しさを増している。
これほどまで目まぐるしい競争が繰り広げられている理由として、M&Aの活発化、グローバル市場の誕生、各企業のたゆまぬR&D活動など、さまざまな理由が指摘されることだろう。しかし我々の調査によれば、IT投資が著しい成果を上げていることこそ、主たる原因である。
今日の経済にあって、ITがどのタイミングで、どのように競争優位に結びつくのかを理解するために、60年代から2005年にわたってアメリカの全業界全上場企業を調査した。
各社の売上高、利益、利益率、時価総額などの財務指標を調べたところ、その結果は目を見張らされるものだった。90年代半ば以降、これまでにない競争力学が働いている。具体的には、業界リーダーとそれ以外の格差が広がり、一握りの企業が市場シェアの相当部分を押さえるという傾向が強まったほか、業界内の勢力図は何度も塗り替えられた。
さらに驚くべきことは、これは経済学者のジョセフ A. シュンペーターがいまから60年以上も前に予見した、資本主義における急激な変化を生み出す「創造的破壊」に酷似している。IT投資の増大と質的向上がごく短期間に実現し、それと歩調を合わせるようにして競争が激化する。
その陰には、既存業務を部分的あるいは抜本的に改めるために、各社が雪崩を打ったかのように、インターネットやITを活用し始めたという事情がある。実際、とりわけ競争力学が大きく変化したのは、他の要因を考慮してもなお、ITに巨額投資した業界なのである。
この傾向は、ソフトウエアや音楽など、デジタル化の進んだ業界では言うまでもないだろう。これらの業界には、かなり以前から一人勝ちと栄枯盛衰という特徴が見られる。次々とイノベーションの波が押し寄せるため、高い革新性を発揮して優位に立ったからといって安穏としてはいられない。
たとえば検索エンジン市場では、ゼロから市場を切り開いたアルタビスタなどは、すぐにヤフーに取って代わられ、そのヤフーも瞬く間にグーグルに王座を奪われた。音楽業界全体でも、各ジャンルにおけるアーティスト別売上高ランキングでも、首位の座は目まぐるしく入れ替わる。