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MBA教育の欠点
「あなたがたが怒っているのは知っている。私も怒っている」
1977年、アメリカの政治家で、ゲイの権利活動家であるハーベイ・ミルクは、同性愛者差別禁止法廃止に反対する抗議集会で、こう宣言した。
今回の経済危機で、世界中の人々が苦しみ、同じように大きな怒りを感じている。その怒りの矛先は、大企業に向けられている。経済の中核を担ってきた諸機関、すなわち投資銀行や格付け機関、中央銀行をはじめ、私が社会人としての人生のほとんどを捧げてきた場所、すなわちビジネススクールへの社会的信頼は失墜してしまった。
MBAに対する拒絶反応は、至るところで散見される。2009年3月3日付『ニューヨーク・タイムズ』紙には、「今回の不況によって新しいストーリーが生まれ、それは人文科学教育に波及している」といった読者の声がいくつか寄せられた。
投稿者たちは、芸術や文化史、文学、哲学、そして宗教を学ぶことによって、批判的思考(クリティカル・シンキング)や道徳的推論が高まるという事実をやんわりと指摘している。そして、ビジネススクールではこれらのスキルを教えていないため、MBAホルダーたちは目先の利益にとらわれ、自分に都合のよい意思決定を下し、それが今回の金融危機を引き起こしたのではないかと意見している。
その2日前、ロンドンの『タイムズ』紙に、私のかつての教え子であるフィリップ・デルブス・ブロートン[注1]の投書が掲載されていた。フィリップは、私がハーバード・ビジネススクール(HBS)で教えた学生のなかでも優秀な部類に入っていたと記憶しているが、記事を読めば、彼も私のことを覚えているらしい。
ブロートンはその投書のなかで、私が、現在苦境に陥っているロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)が2000年に実施した組織再編を手伝ったことを喧伝したこと、また他のHBS教授たちが、RBSのM&Aや顧客サービス、行員のリテンション戦略に関するケース・スタディを執筆したことを記している。