コラボレーションは万能薬ではない

 社内コラボレーションは、いかなる場合でも、組織にとって有益である──。このような考え方が支配的である。そこでリーダーたちは、社員たちが縦割りなど気にせず、組織の壁を超えて部門横断的に働くことを、一つ覚えのように奨励する。

 このようなイニシアティブはメンバーへの負担が大きいため、抵抗に遭うことも少なくないが、部門の垣根を超えた製品イノベーション、クロス・セルによる売上げ増、コスト削減にまつわるベスト・プラクティスの移転など、コラボレーションが生み出すであろう恩恵は計り知れない。

 この考え方はいまや当たり前になっているが、社員たちが協働すればするほど、会社が上向くという、誤った前提に基づいている。実際、コラボレーションが業績の足を引っ張ることが少なくない。私は、この領域について15年にわたって研究してきたが、そのようなケースを幾度となく見てきた。

 ある時、ペンシルバニア大学ウォートン・スクール准教授のマルチーヌ・ハースと一緒に、某大手ITコンサルティング会社で100を超えるベテラン営業チームの調査を実施した。

 各チームとも、5000万ドル相当、もしくはそれ以上の大口契約をめぐって、IBMやアクセンチュアといったライバルとしのぎを削っており、提案書をまとめるに当たり、たとえば見込み客が導入を検討しているITに詳しいチームにアドバイスを仰いでいた。

 この一見当然と思われるやり方について調査したところ、その結果にびっくりした。何とコラボレーションすればするほど──他の営業チームの助けを借りた時間によって測定した──成約率が低かったのである。

 ベテラン・チームは概して、他のチームに学ぶことはあまりないというのが、我々の結論である。また、何がしかの知識を得ても、提案書に費やす時間が増えるため、最終的にはマイナスとなる。