ユーザーのニーズに合わせて変化する商品が増えている

 2017年、看板商品リトルレッドワゴンを製造する玩具メーカー、ラジオフライヤーは、リモコンで操作可能な電池式の子ども向けの車を発売した。同製品には幼児の成長段階に合わせて3つの操作モードがある。

 第1段階は、親が目を光らせて車を遠隔操作する。第2段階では、子どもがハンドルを握るが、危うい判断をすれば親が無効にできる。第3段階では、心配があろうがなかろうが、子どもがすべての運転上の判断を行う。ラジオフライヤーは新製品に、その能力とセールスポイントを見事に表したシンプルな名前をつけた。「ザ・グロース・ウィズ・ミー・レーサー」である。

 ザ・グロース・ウィズ・ミー・レーサーは、ユーザーの進化するニーズに合わせて変化し拡張できる、今日の数ある商品の一例にすぎない。20年以上にわたって製品開発を研究してきた筆者ら(学者とコンサルタント2人)はこれを「成長する製品」と呼んでいる。近年、その数は増加し、複雑さも増している。

 たとえば、グーグルのアンドロイドやアップルのiOSは日常的に更新され、スマートフォンに機能が追加されていく。テスラは毎月のようにソフトウェアをアップグレードし、車の性能を向上させている。ジョンディアはハードウェアを変えなくても、ソフトウェアのアップグレードを通じて収穫作業用コンバインに機能を追加できるようにした。

 高齢者はいまや、ディープオプティクス製チューナブル・レンズの眼鏡をかければ、徐々に進行する老眼問題を克服できる。医学研究者は心臓弁やステントなど、幼い患者の体に合わせて大きくなる小児用埋め込み型デバイスを試験中だ。

 本稿の内容でさえも成長する製品といえる。サイトからアクセスしてチャットGPTを使い、本稿の原則をさまざまな状況に適用したり、定期的に情報更新されるアドバイスを閲覧したりすることが可能なのだ。