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米国の地方自治体はスマート化に出遅れている
米国はイノベーションに関して世界の先頭を走っている国だ。世界でとりわけ企業価値の高いスタートアップ企業、最も評価の高い名門大学、活発に研究成果を発表している研究機関、非常に優れたAI関連企業、そしてベンチャーキャピタル資金のほとんどが米国に集中している。
しかし、米国の都市は例外だ。世界競争力センターが最近発表した世界のスマートシティランキングを見ると、ランキングのトップ30には、米国の都市が一つも名を連ねていない。トップ50までにランクインしている都市も、ニューヨーク、ボストン、ワシントンDCの3都市だけだ。
政府機関、特に地方自治体のオペレーションのあり方が民間企業と異なる理由は数多くある。筆者らは3年前、全米市長会議(USCM)と協働して、その数ある理由の中で最も重要な要因を明らかにするための取り組みを開始した。とりわけ、地方自治体レベルでのAIの採用を妨げている最大の要因を見出したいと考えた。
この研究で米国の数十の都市で活動する150人以上のリーダーたちを対象にインタビュー調査を行ったところ、回答者らが一貫して指摘した問題が3つあった。
・硬直化と縦割り化を起こした官僚機構(83%の人がこの要因を指摘した)。地方自治体内のそれぞれの部署が他の部署と切り離された状態で活動し、自己変革へのインセンティブを抱きにくくなっているという。
・煩雑な規制(44%の人が指摘)。膨大な量のルールにからめ取られて、都市が大胆な行動を取れなくなっているという。購買に関する条件や建築規制などのルールは、都市がスタートアップ企業と協働する道を実質的に閉ざすものである場合もある。
・リスク回避の傾向(31%の人が指摘)。地方自治体のリーダーたちが恐怖心に囚われるあまり、新しいテクノロジーの導入に及び腰になる場合が多いという。そのような傾向は、ビジネスリーダーより際立っているとのことだった。市長たちは、テクノロジーが有益である可能性があるとわかっているが、あまりよく知らないツールを試すことへの恐怖心を拭えないのである。
以上の3つの要素が組み合わさる結果として、国全体としては活力と起業家精神に満ちている米国にあって、地方自治体が目を見張るほどはなはだしい停滞に陥っているのだ。