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管理職の半分以上が経営陣を信頼していない
管理職の約半数が、自分の上司である経営陣を信頼していない。これは、私が世界各国30社の管理職450人を対象に実施した調査から得られた結果である。
2002年、世論調査会社のゴリンハリスがアメリカ在住者を対象に実施した調査の結果も同じく寒々しいものだった。実に調査対象者の69%が「だれを信頼してよいのか、わからない」という項目にイエスと答えた。
またこれと同じ年、シカゴ大学が800人のアメリカ人を対象に実施した調査でも、5人に4人が、大企業経営者を「ある程度は信頼している」、あるいは「ほとんど信頼していない」と回答している。
経営者全般を対象とする場合と自社のCEOを対象とした場合では、もちろん信頼の度合いも種類も異なるだろう。また逆に、多くの人たちから信頼に値すると考えられている企業や経営者が存在する。
とはいえ、これら一連の調査が示す一般的な傾向は憂慮すべき事態といえるのではなかろうか。というのも、他人を信頼できないという環境は高い代償をもたらすことが多く、時には致命的な問題に発展しかねないからだ。
昨今の相次ぐ企業スキャンダルによって、経営者全般への信頼度が損なわれたのは言うまでもない。財務諸表に「不信」という勘定科目が掲げられることはありえないだろうが、ワールドコムの一件は不信感がもたらすコストの大きさをまざまざと見せつけた。
私は長らく、ビジネス・リーダー向けのコースで信頼について教えているが、「信頼度の低い職場とはどのような環境でしょうか」と参加者たちに尋ねると、たいてい「ストレスフル」「険悪」「対立的」「非生産的」「高いプレッシャー」というような答えが返ってくる。
一方、信頼度の高い職場について聞くと、「楽しい」「協力的」「やる気を起こさせる」「生産的」「快適」といった回答になる。
年々激しさを増している人材獲得競争において、信頼の文化を醸成している企業が優位なのは言うまでもない。協力的で生産的な環境と敵対的でストレスフルな環境を比べて、後者を選択する人はそういないだろう。
したがって、信頼の本質とそのマネジメントについて深く理解することはきわめて重要である。私の定義では、信頼とは、自分が弱い立場に追い込まれた時、安心してだれかに頼ることのできる状況をいう。